第十章 霊媒師事務所の新入社員

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「ソイツにはたぶん近いうちに会えると思うぞ。昨日、まかせてた現場の完了連絡が入ったし、交通費の立替分が相当溜まってるはずだからな。精算しに出社するだろ」 「そうですか、お会いするのが楽しみだなぁ。また色々と教えてもらおうっと。その方は男性ですか?それとも、」 女性ですか? と、聞きかけたところで、僕の頭の中に聞き慣れた声が割り込んできた。 ____あ、テステス、こちら持丸。業務連絡、業務連絡。ユリちゃんと無事会えました。早目に到着しコーヒーを飲んでいたところをT駅にて発見、確保。これから一緒に会社に向かいます、オーバーアウト。 「気持ち悪っ!って、ああ、これ先代からの連絡か。もう何回か聞いてるけど……いきなり頭の中に声が響くから、びっくりするな。 社長ー、今の業務連絡聞きました?ユリちゃん、もうこっちに向かってるって」 「おぅ、聞いたぜ!てことはあと数分で来るかな?……入社手続きの書類はこれで全部揃ったし、ぬかりはないな!ヨシ!」 社長の準備は万端のようで、書類の束を指差して頷いている。 僕も社長にならい、机の上に並べておいたポット、湯飲み、ティーバック各種を確認し、ヨシ!と声に出して頷いてみた。 会社(ここ)は駅から近い。 ユリちゃんはもうすぐ到着するだろう。 事務所の中の壁時計は9時30分を指していた。
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