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◆
プルルルル
ユリちゃんと先代を待つこと10分弱。
事務所内のビジネスホン、それの内線呼び出しが鳴った。
僕がワンコールで受話器を取ると、
『お、おはようございます!藤田ユリです!今、先代とドアの前にいます!』
と、緊張したユリちゃんの声が聞こえてきた。
「おはようございます、岡村です。鍵はかかってないから、そのまま入ってきてくれる?」
『は、はい!』
コンコン
「し、失礼します」
小さなノックの音がしてドアが開くと____まぶしっ!!
そこには社長の面白グッズコレクションの1つ、探検隊仕様のLEDヘッドライト(通話機能付き)を、モロに見てしまった時以上の眩しさを放つ、ユリちゃんの姿があった。
フレッシャーズ。
学校を卒業して新社会人になった、夢と希望に輝く若者。
先月高校を卒業したばかりのユリちゃんも、当然フレッシャーズだ。
彼女は先週会った時のパーカーにジーンズというラフな格好とは一変し、真新しい紺のジャケットとスカートにピカピカの靴を履いてカチコチになっている。
初々しさと清潔感がこれでもかと溢れ出て、社会に出て8年超の擦り切れた中年には……もう本当に眩しいばかりだった。
「おっ、ユリよく来たな!なんだおまえ、ピッカピカのスーツじゃねぇか。わざわざ買ったのか?」
出迎えた社長もユリちゃんのスーツ姿に目を丸くしている。
「はい!昨日、岡村さんから連絡もらって、それからすぐに買いに行きました!私、リクルートスーツなんて持ってなかったから、どんなのがいいかわからなくてお店の人に相談したんです……あの、変ですか?」
「いや、そんなことはない。すごく似合ってるぞ。真さんが見たら感動して号泣だな」
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