第十章 霊媒師事務所の新入社員

7/21
前へ
/2550ページ
次へ
「へ……?そ、そうだったんだぁ……安心したぁ……ホッとしたぁ……」 すでに採用は決まっていると聞いたユリちゃんは、それまでピシッと伸ばしていた背筋をヘナヘナと丸め、良かったーと何度も繰り返していた。 「僕の言葉が足りなくて心配させちゃったね、ごめんよ。ほら、お茶飲んで。今日のお茶はユリちゃんのために家から持ってきたレモンバームだよ。ノンカフェインでリラックス効果があるんだ」 「はい!いただきます!……あ!おいし!私、岡村さん達の会社に入れるの嬉しいです!これから頑張りますね!」 こちらこそよろしくー、なんてほのぼのしているところに履歴書を読み終えた社長が笑いながらやってきた。 「ユリ、おまえ資格すげーの持ってんな!」 ん?資格?確かユリちゃん事務に強い資格は持ってないって言ってなかったか? 「あっ!それ、いつか爺ちゃんと仕事したくて取っておいたんだけど、でも、事務のお仕事には全然関係ないし……」 「いや、そんなのいいんだよ。事務は最初は大変かもしれねぇけど、覚える気がありゃそのうち慣れる。わかんねぇコトは何回、何十回聞いてくれてかまわねぇ。ミスもどんどんやってくれ。ミスした方が覚えるからな」 や!そんな!なんて恐縮しているユリちゃん、一体どんな資格持ってるの? お爺さんと仕事したいって言ってたから山関係? 「持ってる資格ですか?えっとですね、“立木の伐採作業者”という資格です!って言ってもわかりにくいですよね。要するにチェーンソー取扱い者の資格です!これがあれば爺ちゃんの手伝いができるかなぁって」
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加