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「どうしたー?なんか泣き声が聞こえたけど……って!ユリ、泣いてんじゃねぇか!なにがあった!エイミー!おまえが泣かしたのか!?」
入社記念写真のプリントアウトから戻ってきた社長は、泣きじゃくるユリちゃんを見ていつになく動揺し僕に詰め寄った。
「ち、違いますよ!僕じゃありません!ユリちゃんは先週のケーキ写真を視て泣いちゃっただけで……ん?待てよ?見せたの僕だし……これって、やっぱり僕のせいか?」
慌てて冤罪を否定、と思ったけど、家族の心霊写真を見せたのは僕だし、それを見て泣いちゃったのも事実、てことは結果悪いのは僕かも……と、強く否定できずにいた。
「エイミー、おまえなにやってんだ!入社初日に泣かすなよ!どうすりゃいいんだ?ユリ、泣きやめ!お菓子食うか?エイミー!今すぐコンビニ行って来い!」
社長の怒号に「はい!喜んでっ!」と、事務所ドアに駆けようとした、が、慌てまくった鼻声のユリちゃんに止められた。
「お、岡村さん!コンビニ行かなくて大丈夫です!お菓子ならカバンにいっぱい入ってますから!それから清水さん、違うんです!岡村さんはなにも悪くないんです!反対にすごく感謝してるんですー!」
ユリちゃんの必死の制止に、社長は片眉を上げて訝しげな顔をする。
「どういうことだ?エイミーが泣かせたんじゃないのか?」
ユリちゃんはブンブンと顔を横に振りながら社長の前に立つと、
「岡村さんは先週、ウチでみんなでケーキを食べた時の写真を見せてくれたんです。その写真にはママと爺ちゃんと婆ちゃんが楽しそうに笑ってるのが写ってて……まさか、そんな写真撮っといてくれたんて知らなかったから……嬉しくて……嬉しくて……うわぁん!」
感情が高ぶってしまったユリちゃんが、またもやわんわんと泣き出してしまった。
そんな彼女を前に、僕も社長もオロオロオロオロ……非モテの野郎2人は完全にお手上げの戦力外。
女の子の涙を止めるという難関に、今日のメンツで一番戦力になりそうなのは癒しの猫又、大福ではないだろうか?
確か大福は先代と一緒に、会社の庭で遊んでいるはず……
僕が急いで呼びに行こうかと思ったその時、ナーイスタイミング!背後から、先代に抱っこされてご満悦の大福が現れた!
が、しかし、
「なんだか泣き声が聞こえた気がして戻ってきたら、なにがあったの!ユリちゃん泣いてるじゃない!清水くんと岡村くんで泣かしたの!?もしそうなら許しませんよー!」
アウチ…助け舟が来たと喜んだのも束の間、どこかで聞いたような先代のこのセリフ。
残念ながら、さっきのくだりの2ターン目に突入したようです。
だから違うんですってばー!
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