第十章 霊媒師事務所の新入社員

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うんうんと頷く僕らに社長は、こうも続けた。 「先週のケーキ写真で爺さんらから発せられる情報エネルギーは、長年一緒に暮らしてきたユリだからわかったんだ。だけど俺らは先週1回しか会ったことがねぇからよ、情報が少ない分、(もや)にしか視えねぇ」 そういうことか。 だからみんなそれぞれ違って視えたんだな。 ん? ならテレビでやってる心霊特集で、視聴者投稿の心霊写真を視た霊能力者が『これはスゴイ悪霊ですね』なんて言っているけど、鑑定の霊能力者は写っている霊と面識なんてないからわからないんじゃないか? 「あれか?あれは半分はインチキだ。その心霊写真ってのがテレビに映ったの視たらよ、(もや)もなんもねぇことがほとんどでな。まあ、それでもたまには本物の心霊写真が出てくることもあるが、そういうのはヘビーな怨み辛みの情報(ねん)に塗れてる。俺はもちろん、その霊を知らねぇから人の形には視えねぇが、絡まる(もや)の色は白じゃねぇ、赤黒かったり真っ黒だったりと洒落にならんくらい禍々しい。テレビに出てる霊能力者もおそらく色で悪霊かどうか判断してるんだろう」 そうか、てことは面識のない(または薄い)幽霊(ひと)が写っている心霊写真は、霊力を持ってしても、(もや)にしか視えずってことなんだな。 で、悪霊か否かってのは色で判断していると。 ユリちゃんの家族や先代、大福が白い(もや)に視えたのは彼らがみな善良だからなのだろう。
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