第十一章 霊媒師 キーマン

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やっぱりそうか! なんて、そりゃそうだよねぇ。 人や動物、物、すべての念がどこまでも伸びてたら、世界中の知らない念まで届き飛び交うことになる。 そうなったら、失せ物探しどころじゃない。 大量すぎる多国籍な念に振り回されて判別すら不可能だ。 「ところで、先代の湯呑みが写ってる写真ってないんですか?」 まずは写真を見せてもらうこと___と、言っていた先代に、湯呑みの写真がないのかを聞いてみる。 「いやぁ、すまない。湯呑みの写真はないんだよ。今の若い子なら貰ったプレゼントを写真に撮ったりするんだろうけど、私はホラ、お爺さんだからねぇ」 そうなると手掛かりは……先代から聞いた口頭での説明のみとなる。 先代が宝物だという湯呑み茶碗は、きっと幸せな陽の念を発しているのだろう。 だけど陽の念か……うーん、正直言って、それがどういうものなのか抽象的でよくわからない。 せめて“これが陽の念ですよ”っていうお手本でもあればいいんだけどな。 なぁんて、そんなふうに願っても、実際お手本なんてものはないのだ。 あれこれ悩んでも仕方ないし時間がもったいない。 少しずつ場所を移動しながら、視覚、嗅覚、感覚、その他を試していくしかないだろう。 ◆ 湯呑み茶碗だからもしかしてここにあるのでは?という単純な考えの元、1階の給湯室にこもって、目を凝らしたり、匂いを嗅いだり、感覚を研ぎ澄ましたり(本人比だけど)していると、 「エイミー、ちょっといいかー?」 と、社長がヌッと顔を出した。 「あー!社長いいところに来てくれました。先代の湯呑みをどこに隠したのか、ちょっとでいいのでヒントもらえんませんかね?さっきからぜんぜん見つけられなくて、僕、挫けそうなんですよぉ、」 手探りすぎる探し物に、早速弱音を吐いた僕に社長は、 「なんだエイミー、もうギブか?ちょっと早ぇ(はええ)んじゃねぇの?」 と、笑う。 「いやぁ、やっぱりちょっと早かったですかねぇ。だって、どうしたら湯呑みの念を見つけることができるのか、その方法すらまだ見つけられなくてお手上げなんです。もうこれって失せ物探し以前の問題ですよねぇ、」 ははは、なんて僕も笑ってみたものの、しょっぱなから途方に暮れていた。 「まぁ、落ち込むな。そのうちできるようになるさ。それでな、エイミーがまだ会ったことのない霊媒師(ヤツ)が、これから出社してくるんだ。湯呑み探しはいったん中止でこっち来てくれ、紹介すっから」 えっ! 先輩霊媒師の方と会えるの!? いきなりのことで湯呑みの念を探れない焦りも吹っ飛んだ僕は、緊張と期待を胸に社長に連れられて事務所へと向かった。
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