第十一章 霊媒師 キーマン

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社長には恩がある……って、確かさっきも言っていた。 基本直行直帰のこの会社。 同じ会社にいながらたまの出社日もバラバラで、社員同士が事務所で顔を合わせるのは珍しい。 それが今日、偶然にも僕はキーマンさんに会うことができた。 滅多にない貴重な機会、教えてもらいたいことは山ほどある。 霊媒師になったきっかけはなんだったのか? キーマンさんの目に霊体はどんなふうに視えるのか? 失せ物探しは視覚、嗅覚、感覚、どれを使って探すのか? 聞きたいことが次から次へと浮かんでくる……くるんだけども……ああ!ごめんなさい! 僕の中のやじ馬根性が「恩があるってなに?どういうこと?気ーにーなーるー!」と騒いでるのだ。 だってさ、渋谷のスクランブル交差点でサンバが踊れるくらいって、どんだけだって思うじゃない。 ウズウズするなぁ、聞いちゃおうかなぁ、どうしようかなぁ。 でもなぁ、仕事と関係ないし……初対面だし……やっぱり聞きにくいよなぁ、どうしよ、 「ボスとの出会い___あれは……three years ago(スリー イヤーズ アゴー)、」 ちょーーーーっ! 向こうから話始めたーーっ! マジか!や!でも!教えて!ウェルカーーームッ!(あ、キーマンさんがうつっちゃった) 「俺はな、チェリーパイ。昔、K祥寺にある雑貨屋で働いていたんだ。バイトからスタートして数年、気付けば俺は社員に昇格、店長兼バイヤーになっていた」 バイトで入った雑貨屋さんで社員になれただけでもスゴイのに、店長さんだなんてキーマンさん頑張ったんだなぁ。 それでそれで? 「雑貨屋の仕事は楽しかった。俺は元々プリティ&ビュリホーなモノを愛しているし、ショップに立つのも悪くない。そしてなにより兼任のバイヤー業務がサイコーにイカしてた!問屋に並ぶ、雑貨に小物にコスメティック……俺に言わせりゃブロンド赤毛にブルネッタ!卸問屋の粗雑な倉庫で床から天井までギッチリ並ぶ商品(カワイ子ちゃん)は、いつだって俺をハイにしてくれたんだ!」 ブロンド赤毛にブルネッタ……? キーマントークの難易度がどんどん上がって解読が難しい。 要はカワイイ物好きのキーマンさんとしては、問屋さんに商品の買い付けに行くのが楽しかったってことで……いいかな? 「でだ。エブリデイエブリタイム雑貨に囲まれハッピーライフを送っていた俺だったが、ある日を境に一転した。そう……あの日、あの夜、いつもの買い付けの帰り道。会社のワンボックスに100万分の商品(カワイ子ちゃん)を載せて走っていた時だった、」
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