第十一章 霊媒師 キーマン

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◆ ~3年前、6月の夜~ その日の俺は、季節モノの紫外線対策用コスメティックに、梅雨のレイニ―ブルーをレイニーフェスティバルに変えてくれるアイディアグッズ、さらには定番のふわもこドールに、ハートがダンシングせざるを得ないキッチングッズ、そしてボーイもガールもスーパーキュートになるようなキラキラアクセにいたるまで、下代にして合計100万円分の買い付けにテンションがマックスになっていた。 「俺の商品(カワイ子ちゃん)達、期待していいからな。明日はショップの中でも最高の陳列棚(ステージ)に立たせてやる。プリティ揃いのキミ達を見てお店のお客様(ショップカスタマー)が瞬き1つで恋に落ちる場面(シーン)が目に浮かぶぜ、イエァ!」 馴染みの卸問屋はK祥寺の本店から車で2時間の地方都市だった。 たっぷり時間をかけて商品(カワイ子ちゃん)を選び出し、問屋を出たのが17時前。 ファミレスで遅すぎるランチをとったあと、夕方の渋滞に巻き込まれ、なんだかんだとけっこうな時間になっていた。 6月のレインは次第に強くなり、久しく洗車をしていないワンボックスのフロントガラスの視界は悪かった。 だがそんなことは慣れっこだ、俺は免許取りたてのボーイじゃない。 スピードを抑えたセーフティドライブでナイトロードを行けばまったくもってノープロブレムだ。 ただ……1つ気になると言えば、走行中ハッチバックから聞こえてくる、カタカタという微かな異音。 商品(カワイ子ちゃん)を積んだあと、半ドアにならないように思いっきり閉めたのは間違いないんだが……まあいい、明日、明るくなったら見てみるとしよう。 ____この時、すぐにハッチバックの点検をしていたら、俺はボスと一緒に働くことにはならなかったと思う。 そう考えると運命の女神のセンスってヤツはピカピカのダイヤモンドみたいに輝いてるってことだ。 まったく女神(ハニー)には感謝しかない。
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