第十一章 霊媒師 キーマン

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◆ ……おい……おい…… なんだ? もう起きる時間か? たのむ、あと5分寝かせてくれ、 ……おい……おい……しっかりしろ……! だからあと5分って言ってるだろ、 ひどく眠いんだ、 あと5分、せめて3分寝かせてくれよ、 「おい、おい!おいって!目ぇ覚ませよ!大丈夫か!?おい!!」 誰だ? 知らない声だ、なんでアンノウンなメンズが俺の部屋にいるんだ …… ………… ……いや……違うな……ここは……部屋じゃない……問屋からの帰り道……車で……俺……タヌキを避けて……それで…… 「おい!目ぇ覚めたか?あんた大丈夫か?身体動かせるか?」 アウチ……そうだった。 俺、事故ったんだ。 意識が戻った途端、身体全体に軋む痛みを感じた。 「あんた名前言えるか?気持ち悪くないか?どこか痛ぇ(いてぇ)トコとか、感覚ねぇトコはないか?」 ヘイヘイヘイ、そんないっぺんに質問されても答えられないぜ? 落ち着きな、ストロングガイ____ ガイ……?ん……?um(うーん)……?ん!? ウェイ、ウェイ、ウェイ! ウェイトアミニット! ちょっと待ってくれ、あんた誰だ? 俺を覗き込むストロングガイにまったく見覚えがなかった。 スキンヘッドのマッチョボディはまるでレスラーのようだが、スーツを着ているからたぶん違う。 レスラーならいつだってオンリー海パンのはずだ。 気を失ってる間になにがあった? 運転席(なか)でオネンネしていたはずなのに、今は道路で大の字だ。 もしかしてあんたが俺を助け出し、道路(ここ)に寝かせてくれたのか? いつの間にか雨はやみ、夜空にはスキンヘッドによく似た満月が浮いていた。 まるで月が2つあるみたいだな、と思った途端笑いが込み上げる。 が、しかし、身体全体スクラップにあったようなヘビーな痛みに笑うことはできず、口からエアーが漏れるだけだった。 かろうじて動く首を横にむけると、狭い二車線を塞ぐように停まるワンボックスが見えた。 事故の衝撃は思ったより強かったらしく、ぐしゃっと潰れたボンネットと、ハンドルに萎んで垂れるエアバックが妙に生々しかった。 「あんた事故ったんだろ?対物か?それとも自損か?まさかこんな峠道だし対人じゃあないだろうけど、」 「……どれも違うよ、ストロングガイ。対タヌキ事故だ、目の前に飛び出してきたタヌキを避けたらこのザマさ、」 俺はなんとか返事をすることができた。 これで心配してくれるストロングガイを少しは安心させられただろうか。 「マジか。あんたツイてないな、相手がタヌキじゃ金は取れねぇ。ヤツらは保険に入ってねぇからよ」 「そうだな、せいぜい恩返しに期待するよ。で、あんたが助けてくれたんだな?ストロング。ありがとう、礼を言うよ。横になったままで悪いが自己紹介させてもらう。俺の名前は智哉……鍵智哉だ。K祥寺の雑貨屋で働いている、名刺はあとで渡すよ。なんたって今は身体が動かねぇ」 「カギ?カギってキーの鍵か、珍しい苗字だな。俺は清水だ、清水誠。とりあえず喋れるし意識はハッキリしているな。身体が動かないって言ってたが痛みでか?」
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