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「ああ、全身バッキバキに痛ぇ、笑っちまうくらいの痛さだ」
「そうか、あんだけ車がイカれちまってるんだから無理もねぇ。逆に感覚のない部位はないか?吐き気なんかも心配だ」
「痛覚だってのが気に入らないが全身感覚はビンビンだ。それからストロング、エチケット袋は用意しなくていいからな」
「ははっ!それだけ冗談が言えれば上等だ。これから救急車を呼ぶが、来るまで俺もいるから安心していいぞ」
「悪いな、ストロング。あとであんたの連絡先を教えてくれ。改めて礼に行きたい。それと、面倒ついでに1つ頼みがある。俺のワンボックスの後部座席を見てくれないか?あの中には大きなダンボール2箱が積んである。中身は店に卸す商品だ。潰れてなけりゃいいんだが」
俺の頼みを快く聞いてくれたストロングガイは、すぐにワンボックスを見にいってくれた。
事故の衝撃でダンボール箱が潰れている可能性は高い。
だが俺の商品達はそれほど打撃を受けていないはずだ。
安全に運ぶため、ひとつひとつの商品にプチプチエアパッキンのドレスを着せておいたんだ、だからみんな無事なはずさ。
そう思っていたのに……俺の期待は大きく裏切られた。
「鍵さん、マズイことになってる」
困った顔のストロングガイに俺は嫌な予感がした。
「あんたの車、後ろのハッチバックが全開だった。事故でイカれちまったのかもわからねぇ。で、車がぶつかった衝撃だと思うが、ダンボールが壊れて中身をぶちまけながら外に放り出されてた。拾えるものは拾ったが、まだどこかに落ちてると思う。だがこんな暗い場所じゃ全部見つけるのは……」
シット!ガッテム!なんてこった!
俺の大事な商品達がこの寒空に迷子になっているというのか!
シット!シット!シット!
事故でハッチバックが壊れたんだ!
それでハッチが全開になって箱が落ちて、それで……いや……ウェイト……シンク……よく考えろ、そして思い出せ。
違う……違うぞ、事故はきっかけだったんだ。
俺は聞いていたじゃないか。
ハッチから聞こえるカタカタいう変な音を。
なのに……明日、明るくなったら見てみよう、と、チェックもしないで走り続けたのはこの俺だ。
なんてこった……ぜんぶ俺のせいだ!
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