第十一章 霊媒師 キーマン

12/41
前へ
/2550ページ
次へ
「ああ、全身バッキバキに痛ぇ(いてぇ)、笑っちまうくらいの痛さだ」 「そうか、あんだけ車がイカれちまってるんだから無理もねぇ。逆に感覚のない部位はないか?吐き気なんかも心配だ」 「痛覚だってのが気に入らないが全身感覚はビンビンだ。それからストロング、エチケット袋は用意しなくていいからな」 「ははっ!それだけ冗談が言えれば上等だ。これから救急車を呼ぶが、来るまで俺もいるから安心していいぞ」 「悪いな、ストロング。あとであんたの連絡先を教えてくれ。改めて礼に行きたい。それと、面倒ついでに1つ頼みがある。俺のワンボックスの後部座席を見てくれないか?あの中には大きなダンボール2箱が積んである。中身は店に卸す商品だ。潰れてなけりゃいいんだが」 俺の頼みを快く聞いてくれたストロングガイは、すぐにワンボックスを見にいってくれた。 事故の衝撃でダンボール箱が潰れている可能性は高い。 だが俺の商品(カワイ子ちゃん)達はそれほど打撃を受けていないはずだ。 安全に運ぶため、ひとつひとつの商品(カワイ子ちゃん)にプチプチエアパッキンのドレスを着せておいたんだ、だからみんな無事なはずさ。 そう思っていたのに……俺の期待は大きく裏切られた。 「鍵さん、マズイことになってる」 困った顔のストロングガイに俺は嫌な予感がした。 「あんたの車、後ろのハッチバックが全開だった。事故でイカれちまったのかもわからねぇ。で、車がぶつかった衝撃だと思うが、ダンボールが壊れて中身をぶちまけながら外に放り出されてた。拾えるものは拾ったが、まだどこかに落ちてると思う。だがこんな暗い場所じゃ全部見つけるのは……」 シット!ガッテム!なんてこった! 俺の大事な商品(カワイ子ちゃん)達がこの寒空に迷子になっているというのか! シット!シット!シット! 事故でハッチバックが壊れたんだ! それでハッチが全開になって箱が落ちて、それで……いや……ウェイト……シンク……よく考えろ、そして思い出せ。 違う……違うぞ、事故はきっかけだったんだ。 俺は聞いていたじゃないか。 ハッチから聞こえるカタカタいう変な音を。 なのに……明日、明るくなったら見てみよう、と、チェックもしないで走り続けたのはこの俺だ。 なんてこった……ぜんぶ俺のせいだ!
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加