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「ヘイ!ストロング!救急車はあとだ!あんたに頼みがある!」
本気か?
今夜会ったばかりの、しかも事故った俺を助けてくれたストロングガイに無茶なことを頼もうとしている。
こんなことを頼んだら「いい加減にしてくれ!」と、この場から立ち去ってしまうかもしれない……でも、
「頼みってなんだ?言ってみろよ」
ストロングは真っ直ぐ俺を見た。
「会ったばかりで、しかも恩人にこんなこと頼むのは悪いと思ってる。だが今、身体の動かない俺にはあんたしかいないんだ、ストロング!頼む!無くなった商品を探してくれないか?」
頼む……!頼むからイエスと言ってくれ……!
「なあそれ、病院に行くより大事なことなのか?会社の商品を紛失して焦るのはわかるけどよ、これは事故だ。そんなことで鍵さんを責めるような会社なら辞めちまえ。悪いがそがその頼みは聞けねぇ、俺は救急車を呼ぶ」
ストロングの言うことはもっともだ。
会社だってデビルじゃない、失くした商品は保険でなんとかしてくれる。
けど、けどな……!
「ウェイト!待ってくれ!そうじゃないんだ!会社の連中は良いヤツばかりで、こんなことで責めやしない。そうじゃなくて……俺が選んだんだ、」
「選んだ?」
「ああ、あのダンボールに入っていたのは、卸問屋で何万点と並ぶ雑貨の中から、選びに選んで仕入れた商品なんだ。たかが雑貨……なのかもしれない。だけどな、そんな雑貨に救われる人だっている。少しくらい嫌なことがあってもプリティな雑貨に癒されたり、雑貨を通して話が弾んだり、見てるだけで楽しくなったりするんだよ」
「けどな、鍵さんはケガして、」
「頼む!最後まで聞いてくれ!俺のショップは狭い。それは床から壁から陳列棚までぎっしり雑貨が並んでいるからだ。けどな、そんな狭い店にわざわざ来てくれる客がいる。通路を譲り合いながら楽しそうに雑貨を見て、これが可愛い、あれが可愛いと笑うんだ。なぁ、わかってくれ、ストロング。俺が問屋で仕入れたのはただの商品じゃない、みんなのリトルハッピーなんだ。そんな雑貨を……見捨てたままにするなんて……できない」
感情を撒き散らした必死の懇願に、ストロングは一言「参ったな……」とだけ呟くと、イエスともノンとも言わずに背中を向けた。
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