第十一章 霊媒師 キーマン

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暗がりの峠道。 落石防止で山肌をコンクリで固めた壁側と、道路(みち)を挟んだ反対側は傾斜のついた草むらになっていた。 そう、こんなことになった原因であるタヌキが走り去った草むらだ。 クラッシュした俺の車は、ケツを草むら側に向け、二車線を塞ぐように停まっているのだが……シット! せめてケツが壁側を向いていたら、落ちた商品(カワイ子ちゃん)のレスキューも、少しは楽だったかもしれない。 溜息をついて草むらに目をやると、トレジャーハンターのようなヘッドライトを装備したストロングガイが、泥だらけで戻ってきた。 手にはまた1つ、プチプチエアパッキンに包まれた商品(カワイ子ちゃん)が握られている。 「どうだ?鍵さん。これで全部集まったか?」 俺は愛しの商品(カワイ子ちゃん)受け取り、仕入れ伝票と照らし合わせた。 「um(うーん)……まだだ、ストロング。残りはあと、ワン、トゥ、スリー、、、17個だ」 「うひゃー!まだあと17個もあんのかよ!だめだ!ちょっと休憩!」 とストロングは道路にひっくりかえった。 アンビリーバボー…… ストロングはあと17個もあるのかと嘆いていたが、そうじゃない。 残りはたったの17個だ。 1000点以上仕入れた商品のうち、紛失したのは500弱。 それをこの男は1時間もしないうちにほとんど見つけ出してしまった。 こんなミラクルは見たことがない。 俺は次々に生還する商品(カワイ子ちゃん)に大興奮だった。 「なあ、ストロング。あんたすごいな!」 「なにがぁ?」 なんとも気の抜けた返事、だが湧き上がるディープエモーション(感激)をどうしても伝えたい俺は、痛む身体をなんとか起こし、 「なにがって、ストロング!今は夜中でココは峠のど真ん中だぜ?こんなバッドコンディションで、しかも1時間にも満たないショートタイムでほとんどの商品を見つけ出すなんて神業にも程がある!あんた最高にグレートだ!」 とまあ、そりゃあ熱く言ったんだ。 すると意外な事にストロングは驚いたような照れたような顔をした。 「グレート……そうか?」 「ああ!グレートだ!今すぐ飛びついてキッスをしたいくらいにな!身体が痛くてそうできないのが残念だ」 「ははっ!あんたがケガしてて良かったよ、野郎のキッスは俺の好みじゃないからな。まぁ、俺も自分でスゲェんじゃねぇかって思ってたんだが、やっぱりあんたもそう思うか!ッシャーー!なんかやる気出てきた!よし!さっさと残りも探すぜ!」
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