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まだそんな体力が残ってるのか?ってくらい勢いよく跳ね起きたストロングガイは、「残りあと17個!」なんて言いながら草むら方向に顔を向け、右に左にキョロキョロしながら鼻をヒクヒクさせていた。
「ヘイ、ストロング。どうした?くしゃみでもでそうなのか?」
もう6月でスギ花粉はないだろうが、山の中に生える、たくさんの植物のどれかにアレルギー反応を起こしてるのかもしれない。
「違う、くしゃみじゃねぇよ。俺さ、モノ探す時は匂いで追うんだ」
「匂いで追う?」
「そう、探す時は依頼主の気持ちをよく聞いて、どんだけ大事なモノなのか、どんだけ取り戻したいモノなのか、その想いを、その情報を匂いに変換する。たいていの失せ物は、依頼主が発する匂いと同じ、もしくはよく似た匂いを発してるからな、俺はその匂いを追えばいい」
「依頼主……?想いを匂いに変換……?ウエイト!ちょっと待ってくれストロング、俺にはさっぱり意味がわからない」
「悪い、ま、そうだよな、わからないよな。まあ、なんだ。俺はモノを探す時だけ犬になるんだ。犬って嗅覚強えから探しモノが得意だろ?それと同じだ。仕事でな、たまーに失せ物探しをすることがあるんだよ。そん時はもっと広い範囲で探すことの方が多い。だからな、今夜みてぇにたかだか半径数メートルの失せ物探しなんて楽勝だ」
「ストロング、あんたのワークって……」
「ああ?なんとなくわかったか?」
「たぶんな、ビンゴだろうよ。あんたのワーク……ズバリ便利屋だな?」
「便利屋!?……ああ、んー、まあ、遠からず……か?」
「そのマッチョボディ、便利屋なら納得がいく。ゴミ屋敷の大掃除で2tトラック3台分運び出すとかあるもんな。ティーヴィーショーで見たことがあるよ」
「んー、なんかスゲェ違えけど、ま、いっか」
「イエァ、ガイが便利屋なのはわかったが、人の想いを匂いに変換ってのがdon'tget itだ。ただ……なにかを探している時に匂いがするってのはわかる。そんなの俺だけだと思ってたが、そうじゃなかったんだな」
「なに……?鍵さんも……匂いが分かるのか?」
「ああ、匂うよ。理由はわからないが昔からそうだ。どうした?ストロング、そんな顔して。それはあんたも同じだろ?ま、俺の場合は匂いを追うとかそんなんじゃない、ただ匂うだけだがな」
「……鍵さん、それはどんな匂いがするんだ?」
「どんなって、」
「なあ、それ、探すモノによって匂いは違うのか?匂いが強くなったり弱くなったりはするか?探しモノ以外でも匂うのか?匂いでモノは見つかるか?」
「ウェイウェイウェイ!ウェイト!どうした?ストロング!そんないっぺんに……アゥ、わかったぞ、ガイはアングリーなんだな?それだったら自分1人で探せただろ!ってことだな?……悪かったよ、ストロング。俺だって身体が動けば、」
「違う!いいから答えてくれ!どうなんだ?匂いだよ匂い!今も匂うのか?あんたの大事な雑貨の匂いはすんのかって聞いてんだ!それからこれは怒ってる訳じゃねぇからな!」
「ス……ストロング、それ絶対怒ってるだろ。 ああ、わかった答えるよ。今だって匂ってるさ。どんな匂いって……チョコレート、カスタード、ストロベリー……早い話がスィーツの甘い匂いだ。俺がなにかモノを失くして焦っていると、どこからともなく甘い匂いが漂ってくる、甘い匂いを嗅ぐとハッピーになる、ハッピーになると焦りが消える、焦りが消えるとモノも見つかる」
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