第十一章 霊媒師 キーマン

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勢いに押され訳もわからず答えた俺に、ストロングガイはビーストのようなギラついた目を向けた。 「ヘーイ!なんだよ?どうしたんだ?ストロング、俺をそんな目で見て。アハーン?まさかとって食おうってんじゃないだろうな?ハハッ!なんてな! な?ななっ!なぁぁぁァァァアウチィィィ!!」 それはフォーーッ!アーーッ!モーーメンット!!(一瞬)だった!! 無言のままズカズカと近寄ってきたストロングは、座り込んでいた俺をヒョイと軽々持ち上げた! 「ヘイ!ガイ!ストロングガイ!俺!スレンダー!but(バット)!180cm75kg!そこそこデカイ!なのに!You!ビースト!俺を!軽々!担ぎやがった!どこに!行く気だ!ちょ!待てよ!ちょ!待てよ!」 なにが起きたのか、なにが目的なのか、まったくわからないストロングガイの行動に、俺の脳ミソは沸騰しバグが発生した。 そのバグのせいなのか、普段なら人前では絶対にやらない某芸能人のモノマネで(いつもは1人の時にコッソリプレイだ!)ガイを止めるが、ガイはガン無視で暗い草むらへと入り込んでいく!! 「ヘイヘイヘイ!!どこへ行く、ストロング!そっちは暗くてなにもない……(ピコーン!)アーォ、リアリィ?ヘイ!ガイ!ヘイヘイ!メイビーやっぱりYOU、本当は俺の熱いハグとキッスがほしいんだな!?」 あれはほんのジョークのつもりだったけど……だがしかし!ガイは俺の恩人! ヤツが望むならとびきりホットなキッスをプレゼントフォーユーだ! ヘイ!ガーイ!アーユーレディ!? いつでもカマン! 俺オクトパスリップでスタンバイ! なのに、 「んなもんいるか!」 oh……ガイのノーサンキューでアリトル(少し)ガッカリ。 「この辺でいいか、」 そう言って立ち止まったストロングガイは、器用にグルリと俺を地面に降ろすことなく背中に背負い直した。 誰かにおんぶしてもらうなんて小学生以来だ。 「鍵さん、どうだ?ここら辺匂うか?」 ああ、そういうことか。 俺にも探すのを手伝えってことだな? ok!アンダスタン! 「ああ、匂うよ。これは……チョコレートエクレアの匂いだ。あんたもするだろ?ストロングガイ」 ストロングに連れて来られたこの場所は、特別に匂いを嗅ごうとしなくてもチョコレートとシューとカスタード、そしてホィップクリームの甘い匂いでいっぱいだった。 とうぜん俺を背負うマッチョマンも同じ匂いを嗅いでいると思ったのだが、 「いや、チョコレートの匂いなんてしねぇよ。今の俺の鼻には回鍋肉の匂いが漂ってる」 「回鍋肉?肉とキャベツとネギとピーマンと炒めたアレか?オイ嘘だろ?そんな匂いしないぞ?甘いスィーツの匂いしかしないが……」 「人によって感じ方が違うんだよ。ま、それはあとで説明する。それより、匂いを追って商品探せるか?動いてほしいトコがあれば遠慮なく言ってくれ。俺が鍵さんの足になる」 「悪いな、でも大丈夫か?俺、重いだろ?」 「そうでもないさ、愛用のベンチプレスよりぜんぜん軽い」 「そうか。じゃあ、とりあえず深呼吸だ。スゥゥゥ……ハァァァ……スゥゥゥ……ハァァァ……ああ、チョコレートエクレアの甘い匂いが俺をハッピーにさせるぜ」 「……俺は頭に生暖かい息がかかって鳥肌立つけどな」 サクッとしたパイシューの中に、カスタードとホィップクリームがずっしりと潜み、まわりをビターチョコレートでコーティングされたチョコレートエクレア。 一口かじれば、甘々とほろにがが混ざり合い、瞬間的に溶けていく……ハッピー。 こういった甘いモノにはブラックコーヒーがよく合うんだ。
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