第五章 霊媒師OJT-1

6/10
前へ
/2550ページ
次へ
先代、視えちゃったとしても今ここでそれ言っちゃだめでしょ。 ぎゃいぎゃいと不毛な言い争いを収束させるには話題を変えるしかない。 「お話し中すみません。先代、社長、僕に依頼内容と現場に行ったらどうしたらいいか教えていただけませんか? 僕、何もわからないので……」 「おぅ、そうだな! ジジィのくだらない話なぞ聞いてる暇はないんだよ!」 社長の車の話も同等ですよ……と言いたいのをグッと堪え話の先を促してみる。 「これから行くのは東京都H市のアパートで依頼主はアパートのオーナー。依頼内容はお祓いだ。11年前アパートの一室で起こった殺人事件の被害女性が成仏できずに部屋に縛られているんだ。以来この部屋には女の幽霊が出る。殺人事件のあった部屋という事で家賃も下げて貸し出すようになったが、幽霊のせいで住人はすぐに出て行ってしまうらしく困っているそうだ」 「うわぁ……僕もアパートに一人暮らしですけど、殺人現場だったなんて聞かされたら絶対入居しないですよ。まして幽霊が出るんでしょ?」 「まぁ、そうは言っても、告知のルールは曖昧なんだ。新入居者に殺人事件があった事を必ず話さなくちゃいけないのは最初だけ。一度でも誰か入居してその後また空き部屋になった場合、次の入居者にわざわざ殺人現場だった事を話なくちゃいけないという確固たるルールはないんだよ」 「えぇ! そんなのってないですよ!」 「まあな。だけど告知しなくてもかつての居者全員が幽霊を見ているんだ。人の口に戸はたてられん。その元入居者達が当時の恐怖体験をツイッターに上げたり、訳あり物件サイトなんて所にもアパート情報が出回っているから、結局告知しなくてもちょっと調べればすぐにばれてしまう。なんならエイミー“東京都H市 事故物件 幽霊”で検索してみろ。ゴロゴロでてくるぜ?」 僕はすぐに自分のスマホで検索を始めた。 ヒット件数11000件。 本当だ……すごい。 僕は上から順にリンクを開いていく。 中には詳細な住所付きでアパートの外観画像まで貼ってあるのだからオーナーさんはたまったものではないだろう。 僕はサイトからいくつかリンクで飛んでいくうちに当時の事件概要が載ったページへと辿り着いた。 そこにはこう記されていた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加