第十一章 霊媒師 キーマン

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「ビッグラッキー……なんだよ急に、そんなに褒めるなよ。俺、あんたを誤解してたかな?なかなか良いヤツじゃないか」 『ふん、調子にのるな、小僧。褒めているんじゃない、事実を言ったまでだ』 「ぐぬぬぬ……やっぱりイヤなヤツだ」 『とは言えお前は自己評価が低い、もっと自信を持ってもいいと思うが』 「um(うん)?やっぱり良いヤツか……?」 『時に____おまえの顔は濃い、見た目だけならまるで外国の俳優のように整っている。30過ぎても幼子のような私の英海とはえらい違いだ』 え……?幼子って……大福……そんなふうに思ってたの? だけど ”私の英海” だって、キャー!ときめくー!  「ビッグラッキー、今度は褒め殺しか……?アップ?ダウン、アップ?ダウン、上げて下ろして忙しいヤツだな、」 『だが、その顔のせいで昔は辛い思いを沢山したようだな。だからなんだろう?おまえのそのふざけた話し方は。黙っていると ”気取っている” とか” 怖い顔” とか ”睨んでいる” とか言われ続けたおまえは、わざと人に笑われるような話し方を身に着けた。傷ついた分、これ以上傷つかないよう道化になって自分を守ってきたのだろう?幼い頃、友もなく苛められてばかりのおまえは、素の自分に価値などないと決めつけていたのではないか?』 「…………」 『まただんまりか、まあいい。そのまま聞け。3年前、おまえは誠に出会った。誠はおまえの独自な話し方に引くこともなく普通に接しただろう?だがあれは、初対面でケガを負ったおまえに誠が気を使ったからじゃない、誠は細かいことを気にしないからな。人の見た目や印象だけで決めつける男ではないのだ』 「……そんなのは、俺が1番よく知ってるさ。それに……ボスだけじゃない、先代も弥生姐さんも他の霊媒師も、みんな俺に優しくしてくれた。俺の顔も話し方も誰もなにも言わない、自然に受け入れてくれた。もっとも……この会社の連中は、俺なんか霞むくらい個性的なのが揃ってるがな」 ですよねぇ。 社長はもちろんだけど、弥生さんもちょっと、ほら、アレでアレがアレな感じでアレだもの。 『それとおまえ、平蔵によく懐いてたみたいだな』 「ああ、先代だけじゃないけどな。俺はこの会社の連中が大好きだ。ミーティングなんてしたところですぐに話が脱線するし、どいつもこいつもデフォルトでふざけたヤツばっかりで、俺に霊能力(ちから)がないことも容赦なく笑い飛ばすんだ。『幽霊視えねぇとかマジ使えねぇ野郎だな!アタシの後ろに隠れてろ!』なんてな、」 それ言ったの弥生さんでしょ? でもって、その後、あひゃひゃひゃひゃひゃって笑ったでしょ? 弥生さんらしいや。
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