第十一章 霊媒師 キーマン

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『やかましいぞ、キーマン!少し黙れ!落ち着いたら私の尻尾、二股に分かれてるどちらかに手を添えろ。  それから平蔵、平蔵だけこちら側に来てくれ。他の3人は来るなよ』 えーー!先代だけなの!? めっちゃ気になる!僕も行きたい! けど、大福の希望だからガマンする、ションボリ…… 「はいはい、大福ちゃん。今行きますよ、」 ちょっと待っててねと、先代がパーテーションの向こう側に消えた。 『平蔵、勝手なことをして悪かったな』 「なんのなんの。大福ちゃん、ありがとうねぇ」 「ビッグラッキー!なんだ?どうした?もしかして傍にいるのか?先代いるのか?」 『落ち着けキーマン、ステイだ。 平蔵、私の尻尾、キーマンが触れていない方に触れてくれ。私もな、虹の橋のふもとに無駄に36年もいた訳じゃあないのだよ。あすこでは色々と学んだものだ。 よし、用意はできたな?キーマン、今日は特別だ。顔を上げて前を視ろ、』 「前を見ろ?前になにが………………あ……そんな……ドリームじゃないのか……?せ、んだい……?本物の先代なのか……?ジーザス……!」 キーマンさんの声はひどく震えていた。 パーテーションの向こう側、キーマンさんの目に映っているのは……まさか……だけどきっとそうだ。 「鍵君……私が視えるのかな?大福ちゃんの猫又力はスゴイねぇ。大福ちゃんを媒体に生者と死者を引き合わせるなんて大したものだよ。ああ……鍵君、こうして顔を合わせるのは久しぶりだ。だけどねぇ、私にとってはさほど久しぶりではないんだよ。ふふふ、私はいつだって鍵君を見てるからねぇ」 「うぅっ、うっ、うぅう、せ、先代、先代……!俺、会いたかった、もう一度先代の顔が見たかった、俺、あの日、沖縄だったから、死に目にも会えなくて、うぅ、それが、すごく心……残りで、」 「よしよし……ごめんねぇ、辛かったねぇ。仕事を頑張ってる鍵君のジャマをしたくなくてねぇ、私が連絡させなかったの。だけど、それがかえって鍵君に悲しい思いをさせてしまったんだねぇ。鍵君はなにも悪くないんだよ、私がぜんぶ悪いんだから」 「ちが、違う、先代は悪くない、俺が、視えないから、ボスも弥生姐さんも、視えない俺の為に、間に入ってくれて、視えないけど、話は、出来た、なのに、うぅ、視えないこと、直接、話せない、ことばかり、不満に思って、話せることの、ありがたみを、忘れてたんだ。ビッグラッキーに言われて、やっと、気付けた、先代に心配をかけて、ボスや弥生姐さんに、気を遣わせて、自分のことしか、考えていなかった、悪いのは、俺だ」
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