第十一章 霊媒師 キーマン

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「ふふふ、ウチの会社の子達はみんな良い子ですねぇ。それに頑張り屋さんばっかりだ。みんな私の自慢の社員達ですよ。3年前、清水君がキミを連れてきた時、随分個性的な子が来たなぁと思いました。探知能力に長けていて、努力家で、人を笑せる明るい子。だけど、人一倍まわりを見てますよね?人の心に敏感で、人の優しさに心から感謝する純粋さを持っている。だけど、その純粋さゆえに傷つきやすい、」 「せ、先代、俺のこと、うぅ、そんなに、ちゃんと、うぅ、見ててくれたのに、俺はばかだ」 「ほらぁ、泣かないの。鍵君、私は死んでしまった。だけど私は傍にいる。私だけじゃない、清水君も弥生ちゃんも岡村君もユリちゃんも、それに他の霊媒師()達もいる、みんな仲間だ。鍵君は独りじゃないんだ」 「先代、ひどいな。ビッグラッキーを忘れてるぜ?」 「ああ、そうだったねぇ。こうやって私達を会わせてくれる大福ちゃんを忘れちゃいけませんねぇ。大福ちゃん、ありがとうねぇ」 「ビッグラッキー、最初はなんてイヤなヤツだって思ったけど、ありがとう。ラッキーはイイヤツだ。それにベリベリプリティだ!」 『ふん、調子の良いヤツめ。平蔵もキーマンも話は尽きないだろうが、そろそろ終わるぞ。レベルが上がって早々、妖力(ちから)を使いすぎた。少し眠る』 「鍵君、いつでも傍にいますからね」 「先代、ありがとう。俺はもう淋しくない。またボスに入ってもらって話をしましょう、」 2人と1ニャンの声が消え沈黙が流れた。 パーテーションから最初に顔を出した先代は、「岡村君、」と僕を呼んだ。 「大福ちゃん、寝ちゃいそうだから窓際の陽だまりに連れてってあげて」 視れば小さな丸テーブルで溶けたお餅みたいに伸びた大福がいた。 「大福、大丈夫かい?頑張ったね」 寝落ち寸前の大福をそっと抱き上げると、眠たそうな目をシパシパさせて「うなぁん」と鳴いた。 大福、僕には人語で話してくれないの? いろいろ話してみたいことはあったけど、とりあえず沈没しそうな幽霊猫をそっと窓際に運ぶ。 そして陽だまりのオフィスチェアーに乗せてあげると、ぷーぷーと鼻を鳴らし落ちるように眠りについた。
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