第十一章 霊媒師 キーマン

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「チェリーパイ、」 目を真っ赤に腫らしながらも、イケメン度に陰りを見せないキーマンさんが、片手をあげて僕に近寄ってきた。 「良い猫だな、」 「キーマンさん、やっぱりそう思います?」 「ああ、プリティだわ、毒舌だわ、的を得てるわ、俺の完敗だ。きっとビッグラッキーも過去に辛いことがあったんだな。だから俺に説教してくれたんだろう」 「あ!そうだった!なんかすみません!ウチの大福、キーマンさんに言いたい放題で……」 「ノープロブレムだ、チェリーパイ。なんたってビッグラッキーは237才の大先輩だからな。あれくらいノーマルだ。それに、先代に会わせてくれた。感謝しかない。今度、ハイブランドなキャットおやつを貢がせてくれ。それから飼い主でもあるチェリーパイにもお礼がしたいんだが、なにを望む?」 「そんな……お礼なんていいですよ。あ、でも大福のおやつだけは甘えちゃおうかな?でも僕はいいです。それと……僕は大福の飼い主じゃありません。プロの下僕です」 「プロの下僕……?オゥ、イエェ……よくわからないが、そういうものなんだな?OK!アンダスタン!で、チェリーパイへのお礼は譲れない。なんか言ってくれ」 僕はなにもしていない。 だけどキーマンさんも一歩も引く気はないようだ。 うーん、困った……それじゃあ1つだけ、 「そこまで言ってもらえるなら甘えます」 「アゥイエァ!カマン!」 「失せ物探しのコツを教えてくれませんか?今、研修中でして、先代の湯呑茶碗を探してるんです。社長がこの建物のどこかに隠したそうなんですが、まったく見つからなくて……それに、見付け方もわかりません」 なんだそんなことか!とキーマンさんは、パンツのポケットから取り出した、真っ黒レンズのサングラスをかけた。 「俺はなチェリーパイ、さっきも話したが、探し物は匂いと光で見つけるんだ。昼間の明るい間でも、こうしてサングラスをかければ光っているのがわかる。先代の湯呑み茶碗、アレだろ?ライトグリーンで平蔵ってネームが書いてある茶碗、よく覚えてるよ。イエッス!さっそく甘い匂いがしてきた……これは……芋饅頭の匂い……それもすぐ近くだ」 えぇ!もうわかるの? キーマンさんが元々湯呑み茶碗を知っていることもあってか、対象物がなにかと伝えただけで甘い匂いが漂ってきたというのだ。 やっぱり……キーマンさんの探知能力はスゴイ。 社長めぇ、なにが”最弱の霊媒師”だよ、探し物に関しては”最強”じゃないか。 「この部屋の中だ。探し方のコツは……um(うん)?ウェイト、ちょっと待て、湯呑みが動いてる、ホワッツ?」 鼻をフコフコ動かしていたキーマンさんが、サングラスをかけたまま事務所内をグルリと見た。
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