第十二章 霊媒師 水渦ー1

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なんで? キーマンさんと先代には人語で話してくれるのに、なんで僕には話してくれないの? 僕のことが嫌いなの? こんなに大福を愛しているのに、これじゃあ不公平で報われない。 ひどいよ大福! なぁんてね。 そんなこと思わないよ。 そりゃあちょっとは淋しいけど僕はプロだ、プロの下僕だ(自称だけど)。 昨今まれに見る猫ブームだけども、そのせいか猫好きさんも増えてるけども、猫好きとプロの下僕はまったく違う(僕調べ)。 人の布団のど真ん中で寝る猫を、起こさないようそっとどかすのが猫好き。 猫のジャマにならないよう端っこで眠るのがプロの下僕。 遊びに行っても猫が気になり早く帰るのが猫好き。 猫が好きすぎて遊びに行きたいとすら思わなくなるのがプロの下僕。 猫の躾で大声をあげることなく優しく叱るのが猫好き。 猫に躾され、肉球パンチを浴びながらお世話させて頂くのがプロの下僕。 大福がなにを考えなにを望むのか、どうしたら今よりもっと幸せになれるのか、そりゃあ直接人語で教えてくれたら僕も楽だし、たわいのない話を一緒にできたら楽しいだろうと思う。 だけど、僕の希望を大福に押しつけたくない。 あれだけ人語を話せる大福なのに、あえて僕には話さないのはなにか理由があるのだろう。 無理に聞こうとは思わない。 大福がいやがることはしたくないのだ。 「うなぁん」でも「笑止!」でも大福が幸せならそれでいい。 「そうだよね、大福」 「うな、うなぁん」 「え?やっぱり猫おやつがほしいの?」 「なーん」 「うん、いいよ。ちゅるーのカツオ?」 「にゃにゃっ!」 「御意」 てか、"うなぁん"と"表情”で人語でなくても大体わかるしね。
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