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目線は宙を泳ぎ、大声で誘導を繰り返す店長さんに鳥肌が立った。
誰か何か言おうよ。
せめて店の人は止めようよ。
誰も彼もあれじゃあまるで、みんなには店長さんが見えていないみたいじゃないか。
だけど……そう考えれば辻褄が合う。
もしかして……?
僕の中に生まれた小さな疑問を裏付けるように、大福が毛を逆立ててジッと店長さんを見詰めていた。
たぶん大福と僕は同じことを思っている。
列に並びながら僕は、目立たないように片手を湾曲させて神経を集中させる。
手の中に溜まっていく赤い光がバチバチと火花を飛ばし始めた。
こんなことしなくても、もう分かってる。
それでも確かめずにはいられない。
僕は発光の赤い玉を、店長に向けて指で弾いた。
バチッ!!
やっぱりそうだ。
僕と店長さんの両間は赤い電流で繋がれた。
真ん中のレジに立つあの人は生者ではなかった。
店内のお客さんも若い男性フタッフ達も、幽霊である店長さんの姿は視えていない。
だから絶叫しても誰もなにも言わなかったんだ。
どうしたらいいだろう。
いまだ店長さんは叫び続けてるが、生者に害を成す霊とは思えない。
混んだレジを助けようと入ってきた時、とてつもなく疲れた顔をしていたけど、それでも確かに笑っていた。
もしかしたら自分が亡くなっていることに気付いてないのかもしれない。
あんなに痩せて辛そうなのに、生きていた頃と同じように仕事をしに来たとしたら……切ないな。
できれば亡くなっていること分かってもらいたいし成仏させてあげたい。
あとで社長に相談してみよう。
コンビニの店長さんを成仏させたいって。
正式な依頼じゃないからタダ働きになってしまうけど、僕の研修代わりにと言えば協力してもらえるかもしれない。
ほら、美容師さんのカットモデルみたいなノリで成仏モデル的な。
とりあえずはお会計を済ませたら会社に行こう。
それで先代と社長に事情を説明して、どうしたらいいか聞いてみるんだ。
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