第十二章 霊媒師 水渦ー1

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「どうも。“コンビニの変な女”です」 いつの間にか隣に立っていたのは、店長さんを消したかもしれない年齢不詳の不機嫌なあの女性。 なんでこの女性(ひと)がここにいるの!? 「やっぱりアナタが岡村さんだったのですね。会社近くのコンビニで放電するようなバカがいるからもしかして、と思っていました」 粘着質な凝視。 1秒たりとも目線を外さず、僕をバカ呼ばわりするこの女性(ひと)は一体誰なんだ? 初対面なのにすごく失礼だし、ジッと見られてとても居心地が悪い。 それになんで僕の名前を知ってるの? 「ミューズ、朝から毒吐くなよ」 いつもの陽気な口調より、少しだけトーンを落とした社長が、僕と不機嫌な女性の間に割って入ってきた。 てか、今なんて呼んだ? ミューズ……? 「はぁ……社長、私のことミューズって呼ばないでくださいって今まで何度も言ってますよね?」 え!? 今、社長のこと社長って呼んだ?(ややこしいな) という事はこの女性(ひと)もウチの社員、霊媒師だったのか。 僕の名前を知っていたのは会社の誰かから聞いていたのかもしれない。 社長はミューズさんって呼んでるけど、これも絶対社長がつけたあだ名だろうなぁ。 だけど本人すごく嫌がってません? 「そうだったか?でもおまえミューズじゃん」 シレっと言い返した社長の一言に、ミューズさんは苛立ちながらこう言った。 「社長、若いのにボケましたか?社員の名前くらいまともに覚えてください。私の名前はミューズではありません。小野坂水渦(おのさか みうず)です。……はぁ、疲れます。やっぱり清水さんは社長には向いてませんよ。“社員をニックネームで呼ぶフランクな俺”とでも思っているのですか?自分に酔わないでください。こちらは迷惑です」 し、辛辣すぎる……ボロクソ言われた社長は落ち込んでるかと思ったけど、そうでもない。 「あははは!しょうがねぇだろ?俺が社長になったのはジジィの遺言だし、こんな性格なのは親に似たんだ。文句があるなら、そろそろ出勤してくるジジィに言え。製造元にも文句つけたいなら今夜俺ん()来るか?親父に会わせてやるよ」 メンタル(つえ)ぇぇ! あんな言い方されたら僕なら3日はへこむのに! てかこんな濃いキャラがもう1人いるの!? 社長のお父さんもこんななの!?
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