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「結構です。清水さんが社長に向いていないのは事実ですが、私はただの平社員で役職もありません。人事に異議を唱える立場にありませんから」
「そっか。じゃあ朝からそんなにピリピリすんな。俺は慣れてるからいいけどエイミーはびっくりしてるぜ? あ、そうそう、コイツが期待の新人エイミーだ。まあ、ミューズのことだからとっくに知ってるだろうけどよ。相変わらず霊視で覗き放題か?あんましプライベートな事まで覗くなよ?」
えぇ……ミューズさんって霊視趣味があるの……?
僕のことも覗いてたの……?
「別にそこまで視てません。どんな人が入ったのか名前と経歴だけです。顔だって知りませんでしたし」
名前と経歴って……充分霊視してるじゃないですか……怖いよ……
「つか、おまえらコンビニで会ったのか?エイミーが言いかけてた“コンビニの変な女”ってミューズのことだろ?」
ちょっと!
そこ本人の目の前で蒸し返さないでください!
やだ!すっごい睨んでる!めっちゃ睨んでる!
なんか言わなくちゃ!
「は、はい、そうです。だけど変な女性とは言いましたが、本当に変という訳では……」
と、焦れば焦るほど歯切れが悪くなる。
「なんだよ、エイミー。やっぱり変な女だと思ったんだな?」
ニヤついた社長にツッコまれて、否定しきれずしどろもどろになっていると、
「変な女、嫌な女、醜い女。そう思っているのでしょう?言わなくてもわかります。それがなにか?誰にどう思われてもかまいません。私はここに仕事に来てるんです。仲良しごっこをするつもりはありませんから。それから社長、もう一度言います。私をミューズと呼ばないでください。ミューズとはギリシャ神話の女神達の総称です。私のような醜女に嫌味ですか?」
水渦さんは淡々と言い捨てると、僕らを置いてさっさと社屋に入っていった。
悪いな、と肩をすくめる社長は、
「それで?コンビニでなにがあった」
と僕に問う。
「はぁ……」
水渦さんが同じ会社の霊媒師とわかった以上、告げ口するみたいでためらいが生じる。
「エイミー、気にせず話せ。大体の予想はつくよ。ミューズがなんかやらかしたんだろ?」
一瞬だけど社長の目に困ったような淋しそうな、そんな色が見えた気がして、やっぱり話しておこうと僕の気持ちは固まった。
「実は……」
朝のコンビニでの出来事。
なるべく個人的感情が混ざらないよう気を付けながら、僕は視たものすべてを社長に話したのだった。
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