第十二章 霊媒師 水渦ー1

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「グッハァッ!!」 蒼い矢が目前に迫ったその時。 突如右側面、横っ面に何かがぶつかり僕を突き倒した。 ん!? 今のなに!? イテテテ……って、そうだ矢は!? あれ……もしかして当たってない? 僕……助かった……? 謎のアタックを受け地面に転がった僕は、両手両膝を地に着けたまま頭にハテナマークを浮かべ、なにがどうなったのか確かめるべく顔をあげる……と、そこには宙に浮かぶ大福の後ろ姿があった。 「ぶつかってきたのは大福……?」 地上高、目測2m。 目に見えない透明な板に乗っているかのような大福は、宙で四肢を広げ立ち、毛を逆立てて唸りを上げて、二股尻尾はこれでもかと膨らんでいた。 「エイミー!無事か!?」 駆け寄ってきた社長は僕を起こし、「ケガはないか?」と大きな両手で頭から爪先までバシバシと叩いてくる。 どうやら負傷箇所がないか、全身チェックをしてくれてるみたい。 大丈夫です、ケガはありません。 むしろ社長のバシバシ叩くほうのが痛いです。 「身体は大丈夫だな……ん?オマエそれどうした!?右頬が赤いじゃねぇか!チッ!ミューズの野郎……!」 や、ちょっと待ってください。 社長、いくらなんでも女性に対して“野郎”はないでしょう? この場合、“ミューズ、あのアマ……!”が妥当かと。 それから右頬が赤いのは大福が原因で、水渦(みうず)さんのせいではありません。 あの仔が急に僕にぶつかってきたから……って、そうか……! あの大福アタックは、水渦(みうず)さんの矢から僕を守る為だったんだ! 「大福!」 僕は全身から冷や汗が噴き出した。 突然のことで頭が回っていなかった僕は、状況を呑み込むにつれ青くなる。 まさか身代わりに矢を受けて、ケガをしてるとかじゃないよな……? 脳裏にはもがき苦しむ店長の姿が大福と重なり、心臓がバクバクと早打ちを始めた。
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