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「グッハァッ!!」
蒼い矢が目前に迫ったその時。
突如右側面、横っ面に何かがぶつかり僕を突き倒した。
ん!?
今のなに!?
イテテテ……って、そうだ矢は!?
あれ……もしかして当たってない?
僕……助かった……?
謎のアタックを受け地面に転がった僕は、両手両膝を地に着けたまま頭にハテナマークを浮かべ、なにがどうなったのか確かめるべく顔をあげる……と、そこには宙に浮かぶ大福の後ろ姿があった。
「ぶつかってきたのは大福……?」
地上高、目測2m。
目に見えない透明な板に乗っているかのような大福は、宙で四肢を広げ立ち、毛を逆立てて唸りを上げて、二股尻尾はこれでもかと膨らんでいた。
「エイミー!無事か!?」
駆け寄ってきた社長は僕を起こし、「ケガはないか?」と大きな両手で頭から爪先までバシバシと叩いてくる。
どうやら負傷箇所がないか、全身チェックをしてくれてるみたい。
大丈夫です、ケガはありません。
むしろ社長のバシバシ叩くほうのが痛いです。
「身体は大丈夫だな……ん?オマエそれどうした!?右頬が赤いじゃねぇか!チッ!ミューズの野郎……!」
や、ちょっと待ってください。
社長、いくらなんでも女性に対して“野郎”はないでしょう?
この場合、“ミューズ、あのアマ……!”が妥当かと。
それから右頬が赤いのは大福が原因で、水渦さんのせいではありません。
あの仔が急に僕にぶつかってきたから……って、そうか……!
あの大福アタックは、水渦さんの矢から僕を守る為だったんだ!
「大福!」
僕は全身から冷や汗が噴き出した。
突然のことで頭が回っていなかった僕は、状況を呑み込むにつれ青くなる。
まさか身代わりに矢を受けて、ケガをしてるとかじゃないよな……?
脳裏にはもがき苦しむ店長の姿が大福と重なり、心臓がバクバクと早打ちを始めた。
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