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「大福!ケガはない!?矢は刺さってない!?」
宙に浮かぶ大福に僕は声を張り上げた。
すると大福は、背を向けたまま二股尻尾をブンと大きく一振り、二振り。
僕はそれを見て、長く深い安堵の溜息をついた。
「よ、良かった……!大福、なんともないんだね……!」
愛しい幽霊猫が無傷と知った僕は、ヘナヘナと力が抜けた。
横で社長が、
「え!?あぁ!?え!?今のなんだよ!大福、なんも言ってねぇじゃん!なんでわかるんだよ!」
なんて騒いでるけど、大福はちゃんと尻尾で答えてくれた。
僕にはそれがわかる、なんたって猫の下僕だからね。
それからもうひとつ分かることがある。
今、僕の大福はとてつもなく怒っていた。
「薄汚い化け猫がぁ!!私の邪魔をするならオマエも一緒に消してやる!!」
僕を仕留め損ねた水渦さんは、落ちそうなくらい窓から身を乗り出し、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていた。
やっぱりあの人……本気で僕を殺るつもりだったんだ。
感情的になってしまった僕が彼女を煽ってしまったのかもしれないけど、それにしたって何故そこまで簡単に人を傷つけようとするのだろう……?
「ミューズ落ち着け!これ以上問題を起こしたら、おまえは会社にいれなくなるぞ!前に約束しただろ!」
これ以上問題を起こしたら?
前に約束した?
社長の口ぶりから察するに、水渦さんはこの手のトラブルは初めてではないのかもしれない。
「うるさい!黙れ清水!私より霊力低いくせに!社長になったからって偉そうにすんな!大体アンタ社長に向いてないよ! それとオマエ!岡村!なにが“期待の新人”だ!放電しかできないくせに調子に乗るな!コンビニのジジィ消したくらいでグダグダ言いやがって、なにが“コタエテクダサイ”だ!あぁぁぁぁ!!ウゼェェェェ!!ああ、わかった答えてやる!そうだよ、岡村の言った通りだ!うるさいから消した!これで満足か偽善者がぁぁぁ!!」
過呼吸気味にハァハァと息を切らせながら、一気に捲し立てた水渦さんは、さっきと同じように腕を真っ直ぐ伸ばし、今度は人差し指だけでなく五指すべてを僕らに向けてきた。
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