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「エイミー! 大福は!? もうミューズ殺っちまったか!?」
遅れてやってきた社長が、物騒なセリフと共に部屋に飛び込んできた。
「あ、社長来た。ダイジョウブです。大福はそんなことしてません。まぁ、水渦さんの動きを封じた上で鼻フックかましちゃってますけど、」
「鼻フック? あぁ? なんだそりゃ、ってブハッ!! マジかよ! ぎゃははははは!! ミューズ! オマエ! 鼻! ブタっ鼻! 大福、んぷっ! やるな、センスある! ぎゃはははははは! ミューズ! ブサ! スッゲェブサ!」
悪いのは7対3で水渦さんだけど、床に拘束され人前で鼻フックされた女性に対して言う言葉ではない。
水渦さんが「清水は社長に向いてない」って言ってたけど、このデリカシーの無さを見ちゃうと……ねぇ、ちょっと否定しきれない。
はぁ、なんだか少し気が抜けちゃったな。
生者に害を成さない店長さんを目の前で滅されて、しかも断末魔をあげる程もがき苦しむのを視てしまい、ましてや社長から店長さんの話を聞いた僕は、いつになく感情を爆発させてしまった。
水渦さんへの怒りと不信感、それは今も変わらないけど、お互い一方的に責め立てるだけでは話は進まない。
なんとなくだけど、水渦さんの温度も少し下がっているようにも見える。
……
…………
少し話せないだろうか?
「大福、鼻フックやめてあげて?」
僕の声に大福は振り向いた、すごーく不満そうな顔をして。
「えぇ? そんなに鼻フックが楽しいの?」
『うなぁん』
「そっかぁ。だけど、お姉さん痛いって言ってるよ?」
『にゃにゃっ!』
「え? そんなのどうでもいいの? うーん、大福がそう言うなら仕方ないかなぁ……?」
腕組みをして考え込む僕に水渦さんが吠えた。
「岡村ぁ!! 仕方ないじゃないだろう! 痛いんだよッ! 早くやめさせろ!」
「そんなこと言われても……大福、楽しそうだからなぁ。じゃあ水渦さん、大福が鼻フックと拘束を解いてくれたら、僕とお話ししてもらえますか? もちろん矢で攻撃はしないでください。冷静に落ち着いて、です」
「わかった! わかったから今すぐやめさせろ!」
「……本当かなぁ? なんか約束破りそう。もし約束破ったらまた鼻フックしますよ?」
「わかった! わかったって言ってんだろ! ……ああ、もう!! 矢で撃ちません、怒鳴りません、岡村さんが何を話したいのか知りませんが、冷静に落ち着いて話をします。約束しましょう。ですから早く解いてもらえませんか?」
観念したのだろう、途中から乱暴な言葉使いも改めてくれた水渦さんだったが、なんたって、“ワーイ♪”的なY字ポーズで鼻フック姿なもんだから、その丁寧さがかえって笑いそうになる……けれど、ここはグッと堪えた。
「水渦さん、ありがとうございます。それじゃあ大福、お姉さん離してあげてくれる?」
そうお願いすると『うなあん』と一声鳴いた大福は、水渦さんを解放してくれた。
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