第十二章 霊媒師 水渦ー1

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「別に怒っていませんよ。私が施設育ちだって事は隠すつもりもありませんし、この会社の人間は全員知っています。 ドーナツ、いただきますね」 水渦(みうず)さん!もしかして霊視で人の心が読めるの!? ミニドーナツの包みを開けて、口に放り込む水渦(みうず)さんを驚愕の眼差しで見詰めていると、 「岡村さん、私に人の心は読めません。霊視は人の過去や、離れた場所にいる人や物をリアルタイムで視る事はできますが、心の中までは無理です。 あ、ドーナツおいしい」 「充分読んでるじゃないですかぁ!」 「そうですか?それは岡村さんが単純だから大体当たってしまうのではないでしょうか?」 すみませんねぇ、単純で。 言い方にいちいち棘があるんだよなぁ。 「あら、私の言い方に棘がありました?ワザとではありません。元々こういう話し方なんです」 「うわぁ!やっぱり読んでる!僕の心の中読んでる! あ、2人ともドーナツ3つは残しといてくださいよ?先代とユリちゃんと僕の分」 「ユリさんって、さっき更衣室に来た女の子ですか?初めて見る顔ですが、新しい霊媒師でしょうか?」 あれ?水渦(みうず)さんって霊視(のぞき)が趣味なんじゃないの? ユリちゃんのこともとっくに知ってるかと思ってたのに。 「ああ、ミューズはユリと会うの初めだよな。ユリは新しく入った事務員だよ。なんだよ、ミューズのことだからとっくに知ってるのかと思ってたが」 ドーナツ3つを隔離させつつ社長がそう言うと、 「誤解しないでください。私が霊視するのは最低限の事だけです。新しい事務員が来たと知らされていれば霊視()たかもしれませんが、常にこの事務所を視張っている訳ではないので、彼女の事は何も知りませんよ」 そうなんだ。 社長めぇ、大袈裟に言ったな? まぁ、とは言え本人の許可なく経歴とか視ちゃダメですけどね。 「話を戻しましょう。この会社はよく話が脱線しますから、岡村さんも気が付いたら軌道修正をお願いします。あなたは割と常識人のようですから。  施設育ち____これを言い訳にするつもりはありません。ですが、これまでの環境は私の人格形成に大きな影響を及ぼしました。私はこの世のすべてが嫌いです。 店長云々の話の前に少しだけ私の話をしておきましょうか、」
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