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「生まれてから25年間蓄積されたこの憎しみはどこにぶつけたらいいのでしょうか? 私はね、この憎しみをそこらを彷徨う幽霊達にぶつけてきました。岡村さんが視た通りです、少しでも気に入らなければ一方的に霊を滅するんです。ひどいですか?そんな事ありません。だってこの会社でも認めているのですよ?ねぇ社長、そうですよね?」
僕は社長に振り向いた。
そんなこと、本当に会社で認めているの?
「認める場合もある、ってだけだ。生者に害を成す悪霊を発見した場合、成仏の意思確認をし、その意志がなく害を成し続けると思われた時だけだ。行き当たりばったりで、全ての浮遊霊、地縛霊を滅していい訳じゃあないさ。ミューズには前も注意したはずだ。そして、次にまた無差別に滅することがあれば、理由によっては解雇の可能性があるとも言ったよな?」
社長の表情は辛そうだった。
おそらく水渦さんを解雇したくないのだ。
どんな人間でも見捨てられない、それが社長だ。
そんな考え方も“清水誠”個人としてはなんの問題もない。
だが会社の社長としての立場では、嫌でもそうせざるを得ないこともある。
「そうでしたか? 前回文章ではなく、口頭注意だけでしたから聞き違ったのかもしれませんね」
シラを切る水渦さんに社長が拳を握り締めていた。
女性相手に殴りはしないだろうが、相当腹を立てているのがわかる。
ダメだよ、水渦さん、このままじゃあなたの居場所が本当なくなってしまう。
「霊の無差別消去、やめたいのは山々ですが、育ちが悪いのでそう簡単に憎しみは消えません。ですが例えば岡村さん、今後私が負の感情に支配された時、それを抑える為にあなたのご実家をメチャクチャにしてもいいですか? 姉の店を破壊した時のように。例えば社長、私と結婚して家族になってくれますか? そして傍で見張ってて貰えますか? そういった協力が得られたら、憎しみも小さくなって、私の蛮行はなくなるかもしれません。どうですか? お二方にそれができますか?」
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