第十二章 霊媒師 水渦ー1

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まただ、無理難題を吹っ掛けてきた。 僕の実家をメチャクチャにしてもいいなんて言える訳がないし、水渦(みうず)さんが社長と結婚? それだって……いや、まてよ? 2人は独身同士だし……アリか? 「ちょっと待ったーーーー!」 ズシャーーーーーーーーーーーッ!! 突如オフィスチェアに座ったユリちゃんが、待ったをかけて滑車で滑り込んできた。 なに!? どうしたの!? この派手な登場はウケ狙い? 椅子に乗ったユリちゃんは、ミーティング用テーブルにぶつかると共に、跳ねるように飛び降りた。 そして、 「話は聞かせて頂きました! とっくに下に来てたけど、陰でコソコソ聞き耳を立ててたんです!」 と胸を張る。 要は盗み聞きってことだよね? 普通に入ってくればよかったのに。 さらにユリちゃんのテンションは上がり、 「はい、おはようございます! 実の父親に蹴り飛ばされて気を失っている間に、私を庇った母親を父親に殺された藤田ユリが出勤しましたよっと!」 な、なにそのテンション……しかも重っ! 今日の女性陣、話が重っ! 「自分だけが辛いと思わないでください!水渦(みうず)さん、でしたよね?なんなら私の過去を霊視しますか? 私もそこそこヘビーですよ? だからって私、人を傷付けたいなんて思いません!」 さすがユリちゃん! 良いこと言う! だけどこれはいい流れかも。 僕らがアレコレ言うよりも、同じ女性同士、似たような辛い過去を持ったユリちゃんからの言葉の方が水渦(みうず)さんに響くかもしれない。 いいぞ、ユリちゃん! がんばれ!もっと言ってー! 「そ、それから水渦(みうず)さん! さっき言ってた、その、社長と、け、け、け、結婚っ! だなんて絶対認めません! だ、だ、だ、だって、しゃ、社長は、社長は、私と結婚するんですからーーーーっ!」
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