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こんなコトしていいのかなと思いつつ、誘惑に負けた僕は、言われた通り水渦さんの肩に手を置き目を閉じた。
最初はなにも視えず聴こえずだったのが、意識を庭に集中させるてみると、遠くから覚えのある声が聴こえてきた。
____カラ……
____オマエハサ……
「水渦さん!かすかにですが聞こえてきました!これ、社長の声ですよね!?」
「かすかに、ですか……私にはハッキリと聴こえるし視えるんですけどね。岡村さん、もっと集中してください。絶対に2人を霊視んだ、という強い意志を持つのです」
絶対に霊視強い意志って……水渦さん、サラリとヤバイこと言ってますよ?
だけど今回ばかりは水渦さんのご指導、ありがたく頂きます。
絶対に社長とユリちゃんを覗くんだという強い意志を……意志を……僕は持つ!
____シャチョうって……
____マダユリハわカいから……
「水渦さん!さっきよりだいぶ聞こえが良くなりました!それに、社長のツルッパゲも視えてきたような気がします!」
フンガー!の勢いで拳を握る僕を横目に、水渦さんは手指を動かし始めた。
「なにしてるんですか?」
不思議に思って水渦さんに尋ねると、
「印を新たに結んでいます。今回、私が霊視ている映像を、岡村さんの霊力で霊視もらおうとしたのですが、どうもうまくいかないようです。離れた場所にいる2人を岡村さんが直接霊視する事は無理でも、私の中に落とした映像を、私の肩に触れた状態、すなわち距離ゼロの私から霊視する程度の事ならできると思ったのですが……見込み違いでした」
「あ……なんかスミマセン、僕のスキル不足ですよね、面目無い……でもかすかになら聴こえますよ?」
「かすかに?そのレベルで満足ですか?“期待の新人”なのでしょう?もっと向上心を持ってください」
み、水渦さん、やっぱりキツイ……オブラートとか一切無しの言い方が棘だらけで僕はもう全身血塗れです。
霊視……なかなかうまくいかないな。
僕のスキル不足ってのはもちろんだけど……それ以上に人の恋路を覗こうなんてやっぱりイケナイことだったんだ。
これで良かったのかもしれない、いや、そりゃちょっとは残念だけど今回は諦めよう。
「なんですか?そのしょぼくれた顔は。こんな事くらいで諦めないでください。低スキルの岡村さんの為に今、“増幅の印”を組み終えました。これで今から30分、私の霊力は通常の3倍です」
通常の3倍……どこかの赤い彗星みたいな倍率だけど、30分限定で水渦さんの霊力上がるの?
上がるとどうなるの?
……って!!
スゴッ!!
水渦さんの肩に置いた僕の手の平が熱い!
ものすごい霊力が流れ込んでくるのがわかる!
でもって……ナニコレ!
あっという間に僕の視界は、眩い光に包まれホワイトアウトしていく。
ああ……この感覚……田所さんを霊視した時に似ている、目を開けていられないくらいの光に包まれ過去にダイブしたあの時に。
今回僕は神々しいくらいの光に抱かれ、人の恋路を覗くべく事務所の壁の向こう側にダイブしていったのだった。
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