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『ひひひひひひひ……!ユリさんの今の一発、効いてる効いてる!清水のあの顔!茹でダコみたいに真っ赤だよ!おお、愉快愉快!』
目一杯表情を歪ませ、身体を揺らして低く笑う水渦さんに僕はドン引きした。
社長が困ってるのを見るのがそんなに楽しいの?
ひひひと不気味な声を漏らす彼女の目には、笑いすぎのせいか薄っすら涙が滲み、しきりに目尻を指で拭っていた。
えぇ……?そんな泣くほどおもしろいかなぁ?
そこまでじゃないだろう……って、ん?……んー?……ん?……ハッ!!
もしかして……!!
なんてこった!
僕は水渦さんの気持ちに気付いてしまった……!
この涙、本当は複雑な女心なんじゃないですか!?
『水渦さん……あの、大丈夫ですか……?本当は辛いんでしょう?やっぱりもう、霊視やめましょうよ』
僕はおずおずと、愉快愉快と繰り返す先輩霊媒師に声を掛けた。
『清水ぅ!もっと困れ!おお愉快愉カイ、____ん? なんですか?岡村さん。今良いところなのに、訳の解らない事を言って邪魔しないでくれます?何故このタイミングで霊視を止めるのですか?それと私が辛いってどういう意味です?理解不能なのですが』
泣き笑いのハイテンションから一変、怪訝な表情で僕を見る水渦さんに一瞬怯むも勇気を出して言ってみた。
『僕、わかっちゃったんです。水渦さん……笑いながら2人を霊視けど、無理してるんじゃないですか?本当は辛いんじゃないですか?』
水渦さんの気持ちを思うと、ちょっぴり切なくなってくる。
なのに強がる彼女はこう言ったんだ。
『は?辛い?無理してる?私が?なぜ?どうして?意味が全く解らないのですが、』
僕のことを鈍感だと言った水渦さんは、まさか自分の気持ちがバレてしまったとは思っていないようだ。
いや、もしかしたら今彼女は必死に誤魔化そうとしてるのかもしれないけど、ここはハッキリ言うしかない……水渦さん、ごめんなさい!
『だって……!水渦さん、本当は社長のことが好きなんでしょう!?だけど、先に告白した年下のユリちゃんに気を遣って、自分の気持ちを抑えてるんじゃないんですか!?』
言った……!言ってしまった……!
彼女のプライドを傷つけないよう細心の注意を払ったつもりだが、内容が内容だけに正直自信はない。
だけどこのまま霊視いても辛いだけだと思うんだ……!
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