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僕の必死の訴えに、ポッカーンと口を開けたまま固まる水渦さん。
だが、その数瞬後、眉間に深い縦シワがめり込むように刻まれて、細い目がクワッと見開いた。
あ、あれ?
なんか思ってた反応と違うような……?
で、
『はぁぁぁぁ!?全く違いますけどぉ!?なんで?あんな?私より霊力が低くて常にふざけてるハゲ野郎を?話す事と言えば車か筋トレしかない低能を?デリカシーの欠片もなくて失言ばかりのウンコ野郎を?この私が?好きだと?はぁぁぁぁ!?(ブチィィッ!!)
なんだおまえ岡村コラ私を馬鹿にしてんのか!?チッ!全然違うわ!ふざけんなよ?殺んぞ?だがなんでそう思った?理由を聞かせろや、ああ?』
ぬぉっ!!
せっかく丁寧口調になってくれた水渦さんだったのに汚い口調に戻っちゃった!!
てかめっちゃ怒ってる!!
えぇ!?
なんで!?
僕の読み外れてた!?
『オラ、さっさと理由言えや、激不愉快。私があんなウンコ野郎好きになる訳ねぇだろうがっ!』
ヤバ!!
さっきと同じ嫌な臭いが漂ってきた!!
建物越しに僕を殺ろうと矢を撃ってきた時と同じ臭いだ!
水渦さんの負の感情が放つ腐敗臭だよ、コレ!!
相当怒ってる!!
また矢で撃たれちゃう!!
この距離!!
今度こそ当たっちゃう!!
『お、落ち着いてください!いや、だってさっき社長に言ってたじゃないですか! “私と結婚して家族になってくれますか?” って!!最初はただの無理難題だと思ってたけど違うんじゃないですか?本当は好きなんじゃないですか?どさくさ紛れのプロポーズだったんじゃないですか!?』
僕は必死に訴える、そりゃそうだ命懸けだもん!
すると水渦さんは、さっきのことを思い出しているのか、目線を左上に上げたままムスッと黙りこんだ……数秒後。
『ああ、その事か。清水に私と結婚してくれって言ったアレね、あーあーなるほど……ひひ……ひひひ……ひひひひひひーっひっひっひ!!あの時の清水の顔!!思い出しただけで……ひひひ……おお、愉快愉快!!』
とまぁ、それはそれは楽しそうに表情を歪めた。
え……ちょ……水渦さん……?
『……失礼、ですが理解しました。先程の私の発言が岡村さんを誤解させたのですね。これは私にも非があります。申し訳ありませんでした』
水渦さん、丁寧口調に戻った……嫌な臭いも消えた……良かったー!
『誤解を解いておきますが、岡村さんと社長それぞれに一番ダメージが強そうな要望をチョイスして言ったまでです。岡村さんには家族への攻撃を、社長には私との結婚を、ただそれだけです。こんな私にも選ぶ権利はあると思っていますから、大便のような男性は願い下げです』
ウンコ野郎→大便のような男性、と、言葉は丁寧になったけど、やっぱり社長の位置づけはウンコで間違いないみたい。
だけど、そっかぁ、僕の勘違いだったんだな。
でもって少し安心した。
もし水渦さんが社長のことが好きだとしたら、今の2人を視てるのは辛いはずだもの。
『岡村さんの勘違いで時間を無駄にしました。さ、ここから先、私語厳禁です。2人を霊視ますよ!』
私語厳禁って……この人、本当はおもしろい人なのかもしれないな。
ま、いいや!
2人を視ても辛くないと言うのなら、なんの問題もない!
心置きなく霊視に集中だ!
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