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『水渦さんにとって、お姉さんは特別なんだと思います。だけど……だけどね、お姉さん以外にも水渦さんを心配したり気にかけたりしてくれる人もいるんですよ?』
『………………』
『たとえば社長です。あの人、口は悪いけど、水渦さんを解雇したくないって思っているのがバレバレです。それから僕もです。僕はこの会社に入社して、水渦さんの後輩になりました。会社を通して繋がりができたんです。これから先、助け合ったり笑い合ったり、仲良くなれたらいいなぁと思っています。過去は関係なく、今日から新しく、です』
『今日から、ですか』
『そうです。水渦さんと今日初めて会って、しょっぱなから殺られかけて、話し合って、決裂しかけて、そしてなぜか一緒に社長とユリちゃんを霊視するというスタートを……てか、ナニコレ、たった数時間で濃いな』
思い出して顔をしかめる僕に、水渦さんが付け足した。
『……それと、岡村さんは私にハーブティーを淹れてくれましたよね。とてもおいしかったです。あれは……なんというものでしたか?』
『ラベンダーティーです。ノンカフェインで気分が落ち着きます』
美味しそうに飲んでくれてたもんな。
気に入ってもらえたなら僕も嬉しい。
『そうでした、ラベンダーティーでしたね。私にお茶を淹れてくれた人は、姉以外では初めてです。それに、ここまで食い下がって私に説教してきた人も。社長ですらこんなにしつこくないですから』
『あ……やっぱりしつこかったですよね……僕……その、偉そうなことばっかり言っちゃって、すみませんでした』
『いいえ、かまいませんよ。こんな見た目でこんな性格ですから、大抵の人はまともに私を相手にしないので驚いただけです。皆さん私とは極力関わりたくないそうですから』
関わりたくない____そう聞いて、胸がチクリと痛んだ。
僕の大好きなあの2人もそう思っているんだろうか?
深く聞いていいものか躊躇したものの、それでも聞かずにはいられなかった。
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