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「社長はユリさんとお付き合いされるのですか?」
アイターーーー!
いきなり核心キターーーー!
「ブフォッ!な、な、なに言ってんだ、おまえら視てたんだろ?」
明らかに動揺する社長に水渦さんはニタァと笑う。
そして、続けた。
「はい、ですが岡村さんに邪魔をされて肝心な所を覗き損ねたのです。それで?どうなのですか?付き合うのですか?いえね、もし付き合う気がないのなら、ユリさんは単なる部下でしょう?異性の部下の髪や頬、ましてや唇に触るなんて有り得ないと思ったのです」
ニヤついた口調で話す水渦さんに、社長は茹でダコ状態で口をパクパクさせてるし、ユリちゃんなんて顔を隠して後ろを向いてしまった。
もう、こんなん聞かなくてもわかるじゃん。
僕にだってわかるよ。
「どうなんですか?一歩間違えばセクハラで逮捕です。嘘はつかないでくださいね。視たのは私だけではありませんから。ねぇ、岡村さんも視ましたよね?」
え!?ちょ!?なに!?
巻き込まないで!!
なんでそう人の嫌がるポイントを的確に突くんですか!
見守りましょうよ!
ここは2人をそっとしておきましょうよ!
「岡村さん?何故返事をしないのですか?聞こえてます?岡村さん?ねぇ、視ましたよね?ねぇ、ねぇ」
正座のまま上半身を前後に揺すり、その反動で動くオフィスチェアーで僕に迫る水渦さんに、思いっきり顔を背けて拒絶した。
「水渦さん!巻き込まないでください!僕、視てませんから!社長がユリちゃんにベタベタ触ってたのなんか視てませんからー!」
「ほら、やっぱり岡村さんも視たじゃないですか」
ガッションガッションと音を立てながら、僕に迫る水渦さんから逃れようと、僕も上半身を前後に揺らし、オフィスチェアーを前進させる。
冗談じゃないぞ!
空気の読めない水渦さんの流れ弾に当たるのはごめんだ!
徒歩よりも遅く。
そんな僕らの追いつ追われつをポカンと見ていた社長が首を傾げてこう言った。
「おまえら、ずいぶん仲良くなったな。つか、ミューズ、おまえ楽しそうじゃねぇか」
言われた水渦さんはピタッと動きを止めると、
「そこそこです」
と答えながら正座を解き、オフィスチェアーに座りなおした。
あれ?勝手に正座やめちゃったけど、社長が怒る気配はない。
これって、僕も便乗して座り直しちゃっていい感じかな?
「珍しいな、ミューズがこんなに楽しそうなのはよ」
社長はまるで本物のツチノコでも発見したような顔で水渦さんを見ていた。
「そうですか?……まあ、岡村さんは覗きの共犯者ですから。多少の親近感は否めません」
ツンと澄まして答える水渦さんに、社長の口角がグィっと上がった。
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