第十二章 霊媒師 水渦ー2

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「ジジィ、落ち着け、今すぐ結婚は気が(はえ)ぇよ!」 ブンっと右手にソールアーマーを装着した社長は、手加減しつつ先代の肩をバシッと叩いて突っ込んだ。 「えぇ?早いの?なんで?だって2人は好き同士なんでしょう?」 好き同士ってカワイイな。 「あ、ああ。まあ、そうだ」 肯定した社長の頭部が一瞬で茹で上がる。 「好き同士は結婚するのが自然の流れでしょう?」 小首を傾げ心底不思議そうに聞く先代。 仕草はキュートだけど、けっこう深く切り込むな、オイ。 「あぁ……だからよ、その前にやることあんだろうが」 言いながら頭をガリガリと掻き続ける社長は、ソワソワと落ち着かない。 いや、これは社長が悪いんじゃないよ。 社長は今日初めてユリちゃんの気持ちを知ったんだ。 彼女の純粋さと健気さに打たれ恋に落ちたばかりなのだ。 まだデートすらしていないのに、周りが結婚を急かすべきじゃあない。 そういうのは徐々に気持ちを固めていくものでしょう? ここはひとつ、あたたかく見守ってですねぇ、 「その前にナニがあるの!?いい?女の子は繊細なの!少しでも不安にさせちゃだめなの!だからね清水君!今からキャッシュカード持って銀行行って貯金みんなおろしてきなさい!で、ユリちゃんに指輪買ってあげなさい!」 乙女の代弁者(?)となった先代は「有り金はたいて指輪を買って来い」と大騒ぎだし、当のユリちゃんは「指輪なんていらないですぅ!」と大慌て。 社長にいたっては「あ、指輪か!」と、パチンと指を鳴らして頷いている。 そこになぜか水渦(みうず)さんまで便乗し「ウチの洗濯機が壊れそうなんでついでに買ってください」とかほざいてるから、とりあえず僕も「ウチはテレビが古いです」と言ってみた。 僕らに捲し立てられた社長はテンパりながら、メモに【指輪、洗濯機、テレビ】と書いている。 あれ? これもしかしていけるんじゃないか?
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