第十二章 霊媒師 水渦ー2

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「ちと早えけど、俺はちゃんとユリに結婚申し込んで、一緒に住む部屋を探すつもりだよ。アパートの1階で女が独り暮らしなんて危ねぇからな。だからジジィは暴走すんな」 早っ! 付き合うことになったのは、ついさっきなのに! もう一緒に住むこと考えてるの!? 性格的に深く考える前に行動を起こす人だけど、それにしたって早い。 だけどユリちゃんの独り暮らしは、僕も少し心配だったから、社長と住むなら安心できる。 当たり前にように話す社長に、先代は盛大に慌てふためいていた。 「そうだったの!?あうぅ……ごめんよ清水君……私……キミがユリちゃんと結婚するんだと思ったら嬉しくなっちゃったの……すごぐ……ずごーぐうでじがっだどぼぉぉぉぉ!(すごーく嬉しかったのぉぉぉぉ)ぞでで、はじゃぎずぎじゃっだどぉぉぉ!(それで、はしゃぎすぎちゃったのぉぉぉ)」 涙ダグダグの先代に、社長は豪快に笑った。 「ははっ!しょうがねぇジジィだな!ま、ジジィがこうなるのは分かってたけどよ。弥生やキーマン、それと他の霊媒師(やつら)にも報告しねぇとな。……つかよ、その前にもう1つ大事なことがある。ある意味、1番の難関だな」 ユリちゃんを抱っこしたままの社長は(まだ寝たふりしてる)、微かに眉根を寄せ、だがその目は不敵に笑っていた。 「社長?一番の難関って?難関なのになんで笑ってるんですか?」 僕は疑問を社長に投げかけた。 「それはなエイミー、結婚前のご挨拶、『娘さんを俺にください』っていうアレだ。もっとも俺の場合、『お孫さんを俺にください』になるがな」 「ヒィッ!!お爺……!!」 瞬間、僕の背中に冷たい汗がドッと流れた。 「真さんは死んでる。通常なら墓前に報告して手を合わせるくらいでいいんだろうが、俺は霊媒師だ。そういう訳にはいかねぇだろ。挨拶もしないで真さん怒らせることになったら、俺は良くてもユリがかわいそうだからな」 「ど、どうするんですか……?」 ユリちゃんのお母さんとお婆さん、あの2人ならすんなり賛成してくれそうだけど、孫命のお爺さんはどうなんだろう? あっさり認めてくれるとは思えない。 「どうするもこうするも、ちゃんと挨拶するさ。日にち決めて、場所は……そうだな、両家顔合わせってことで俺ん()がいいだろう。真さんが俺達の結婚にゴネるようなら、親父の道場貸してもらって、そこで改めて決闘(ごあいさつ)だ。口寄せは俺がする。なんならエイミーも来るか?」 口寄せ……離れた場所にいる幽霊を(黄泉の国含む)、強制的に呼び寄せる術。 前に先代から視せてもらったことがある、あの術だ。 今回は社長がユリちゃんの家族を呼び寄せるという。 「社長、もしユリちゃんが良いと言ってくれるなら、僕も同席させてください。田所さんにも会いたいし」 「おう」 次回、チェーンソー再び! 藤田家を口寄して結婚を前提にお付き合いのご挨拶の巻! …… ………… ……………… 「岡村さん、日程が決まったら教えてください。私は同席しませんが、遠隔で霊視(のぞき)ますので、」 了解です! 水渦(みうず)さん! まかしといてください! 霊媒師 水渦(みうず)__了
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