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乗り込んで早々、車の中に見慣れないものを発見した。
それはバックミラーでぷらぷら揺れる、小さなカエルのマスコットだった。
ん?
前にこの車に乗った時、あんなカワイイのついてたっけ?
そのカエルはピンク色で頭にお花の飾りをつけている。
暗殺拳の使い手みたいなゴリマッチョには、とてもじゃないが似合わないファンシーさだ。
社長が好んでつけたとは考えにくい。
あ、もしかして、雑貨大好きキーマンさんからのプレゼントかな?
「ねぇ、社長? バックミラーにぶら下がってるカエルちゃん、前からついてました?」
それほど深い意味はなく、なんの気なしに聞いてみる。
と、バックミラーに映る社長とユリちゃんの顔がほんのり赤まり数瞬の無言。
あれ?
どうしたの?
僕なんか変なコト聞いた?
で、それに答えてくれたのはユリちゃんだった。
「あ、あの、これは私が……。いつも仕事帰りは、夜危ないからって社長が家まで送ってくれていたんです。だけど、それだと遠回りになっちゃうでしょう? だから事故に遭わないように『無事にカエル』という意味でお守り代わりにプレゼントしたんです」
社長が?
ユリちゃんを?
毎日家まで送ってたの?
知らなかった……
社長もユリちゃんもそんなこと一言も言ってなかったし。
てか、えぇ?
「だって、ほらよ! 危ねぇだろ? ユリのアパート、駅から少し歩くしよ! 俺、車で走るの好きだし帰り道だし、だからついでに送ってただけだ!」
なんだか社長が慌てて言い訳してるけど、帰り道のついでだぁ?
「ついでじゃあないですよねぇ? だって会社からユリちゃんの家のH市まで行って、そこから社長ん家のあるO市に帰るのって、めっちゃ遠回りですよねぇ? 会社のあるT市からH市に行って、UターンしてT市戻って通り過ぎて、それからO市に帰るルートですよねぇ? どこがついでですか? どのへんが帰り道ですか? ねぇ? ねぇねぇ?」
あくまでも”帰り道のついで”と言い張る社長に、容赦のないツッコミを入れてみた。
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