第十三章 霊媒師 清水誠

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乗り込んで早々、車の中に見慣れないものを発見した。 それはバックミラーでぷらぷら揺れる、小さなカエルのマスコットだった。 ん? 前にこの車に乗った時、あんなカワイイのついてたっけ? そのカエルはピンク色で頭にお花の飾りをつけている。 暗殺拳の使い手みたいなゴリマッチョには、とてもじゃないが似合わないファンシーさだ。 社長が好んでつけたとは考えにくい。 あ、もしかして、雑貨大好きキーマンさんからのプレゼントかな? 「ねぇ、社長? バックミラーにぶら下がってるカエルちゃん、前からついてました?」 それほど深い意味はなく、なんの気なしに聞いてみる。 と、バックミラーに映る社長とユリちゃんの顔がほんのり赤まり数瞬の無言。 あれ? どうしたの? 僕なんか変なコト聞いた? で、それに答えてくれたのはユリちゃんだった。 「あ、あの、これは私が……。いつも仕事帰りは、夜危ないからって社長が家まで送ってくれていたんです。だけど、それだと遠回りになっちゃうでしょう? だから事故に遭わないように『無事にカエル』という意味でお守り代わりにプレゼントしたんです」 社長が? ユリちゃんを? 毎日家まで送ってたの? 知らなかった…… 社長もユリちゃんもそんなこと一言も言ってなかったし。 てか、えぇ? 「だって、ほらよ! 危ねぇだろ? ユリのアパート、駅から少し歩くしよ! 俺、車で走るの好きだし帰り道だし、だからついでに送ってただけだ!」 なんだか社長が慌てて言い訳してるけど、帰り道のついでだぁ? 「ついでじゃあないですよねぇ? だって会社からユリちゃんの家のH市まで行って、そこから社長ん()のあるO(オオ)市に帰るのって、めっちゃ遠回りですよねぇ? 会社のあるT市からH市に行って、UターンしてT市戻って通り過ぎて、それからO(オオ)市に帰るルートですよねぇ? どこがついでですか? どのへんが帰り道ですか? ねぇ? ねぇねぇ?」 あくまでも”帰り道のついで”と言い張る社長に、容赦のないツッコミを入れてみた。
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