第十三章 霊媒師 清水誠

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「いやぁ、私はそれだけが心配だったんだ。本人同士が好き合って結婚したいと言うのなら、こんなに嬉しいことはない。ユリさん、誠のことよろしくお願いしますね」 大和さんはそう言ってユリちゃんに深々と頭を下げた。 「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」 正座の背筋をビシっと伸ばし、同じくユリちゃんも深々と頭を下げた。 ここまでは順調だ。 きっとユリちゃんも喜んでるに違いない、そう思っていたのに、顔を上げた彼女は少し青ざめて不安そうだった。 「どうした?」 そう声を掛けた社長に、一瞬顔を向けたユリちゃんだったが、それには答えず、小さな声で大和さんに向かって話し始めた。 「あの……お義父さんに賛成してもらえて嬉しいのですが……私のことなにも聞かなくて……その……いいのでしょうか?私の育った環境とか……家族のこととか……その……私の家は少し特殊で……それを知ったら……もしかして反対されるかもしれません。それでも後から知られてがっかりされるより、今話した方が良いのかと思ったんです。特に私の父のことは……隠したままにはできません、」 …………アイツのことだ。 酒を飲んでは田所さんとユリちゃんに暴力を振るっていた最低な父親。 田所さんは幼かったユリちゃんを、アイツから守る為にずっと独りで闘っていた。 自分の妻を、娘の母親である田所さんを、些細な理由で絞殺したアイツは今、刑務所で服役中だ。 田所さんは自分の命と引き換えに、娘から鬼畜を引き離し守り切ったのだ。 自分の父親が母親を殺した犯罪者であるということは事実だけれど、ユリちゃんになんの落ち度はない。 だげど、息子の結婚相手の身内に殺人犯がいるということは、やはり隠したままでいる訳にはいかないのだろう。 ああ、だけど、あんな最低な奴のせいで、ユリちゃんの幸せが壊れることになったら……とてもじゃないけど納得がいかない、が、こればかりは僕がどうこう言える問題じゃないのだ。 これから話す複雑な事情を聞いたら、大和さんはなんと答えるのだろうか? 「ユリさんの父親のこと?ああ、今はまだ刑務所にいるんだよね?」 ズズッとお茶をすすりながら、まるで天気のことでも話すような気安さで答える大和さん。 それを聞いてユリちゃんはもちろんだけど、僕も一緒に固まってしまった。 知ってたんだ……。 「ユリさんの父親のことは誠から聞いてるよ、大変だったね。だけど良いお母さんと、良いお爺さんお婆さんがいたから、こんなにも真っ直ぐに育ったんだ。ユリさんは優しくて思いやりのあるお嬢さんだと聞いている。それに加えて正直者だ。父親のことも黙ったままにすることもできたのに、私に話してくれようとしたんだろう?」 「……はい、話さない訳にはいかないと思いました。だけど誠さんから聞いてらしたんですね。あの……本当に良いのでしょうか?私の父は母を……私の半分は、その……殺人犯の血が流れています、大切な息子さんの結婚相手には……相応しくないとお思いではないでしょうか……?」
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