第十三章 霊媒師 清水誠

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絞り出すような震える声に、大和さんは大きく横に首を振った。 「ユリさんにはなんの罪もないでしょう?血の繋がりがというのなら、優しくて強いお母さんの血が、父親の血を呑み込んで浄化させていると思いますよ。ウチの息子はバカだけど、人を見る目はあると思っているんだ。誠が選んだお嬢さんなら心配することなんてなにもないよ」 目を細め笑った顔は社長にそっくりだった。 その笑顔を見たユリちゃんは、ホッとしたのか鼻をズルズルしながら泣きだした。 途端社長は早かった。 そばにあったティッシュを5枚も6枚も引き出すと、ベソをかく赤い鼻にあてがった。 「ほら、チーンしろ」 や、ちょっと社長、チーンって、あはは。 それ恋人に甘いを一気に飛び越え、完全にお父さんじゃないですか。 ん……? お父さん……? …… ………… ああ、そうか……もしかしたらユリちゃんは、心のどこかで優しいお父さんを求めているのかもしれない。 だからきっと年の離れた面倒見の良い社長に惹かれたのではないだろうか? 「それに、ユリさんの父親が服役中というのなら、なおさら誠と結婚した方がいい。なぜならこの先、いつかは刑期を終えて出所する。元々無職のアルコール依存であったなら社会復帰は難しい。そうなると娘を頼って姿を現すかもしれないからね。だけど誠がいれば安心だ。もっと言えば誠だけじゃない、私もいる」 そう言った大和さんの目は笑っていなかった。 「じゃあ、親父はこの結婚に異存はないんだな?」 最終確認をする息子に対し、大和さんは吠えた。 「ある訳ないだろう!こんなに正直で優しいお嬢さんが、おまえと結婚してくれるなんて夢みたいだ!ユリさんに感謝しろよ?ユリさんがいなかったら、おまえなんか一生独身だ!結婚したら家事は8対2(ハチニイ)でおまえが8!ユリさんが欲しいものはなんでも買ってやれ!その分おまえは何も買うな!それから結婚式はどうするんだ?女の子なんだからドレス着ないと!」 大和さん……息子に対しての扱いが雑すぎる。 だけどすごく嬉しそうだ。 目尻には汗のような涙が滲んでいた。
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