第十三章 霊媒師 清水誠

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そうか、そういうことなのか。 あ、だけど待って。 社長は切り株3つに血液をつけてたよねぇ? てことは社長のコピーさんは3体出来るってこと? うわぁ、なんだかとっちらかりそう。 …… そういえばさっき先代は、 呼び出せる式神には神様、妖怪、鬼神といろんなタイプがあるけれど……と言っていた。 妖怪、鬼神はともかく(なにが"ともかく”なのかわからないけど)、神様も可能なの? 「あの、もしかして……先代くらいになれば神様も呼べちゃったりします?」 先代はウチの会社で一番の手練れ霊媒師だ。 その気になれば神様の1人や2人軽いんじゃないだろうか? 神様……視たい! 不謹慎だけど本物の神様、めっちゃ視たい! 「あはは、残念ながら神様は無理だねぇ。だって私達はただのサラリーマン霊媒師だもの。神様だって修行を積んだ神職者に呼ばれるならまだしも、ただの霊媒師じゃあ来てくれませんよ」 「あはは、そっかぁ、そうですよねぇ。ちょっと残念、視てみたかったなぁ」 「いやいや、残念なものですか!神様をお呼びして下手に来られても気を遣うだけですよ。なにか頼むのも気が引けるし、怒らせて天罰くらうのもイヤだし……ウチの会社の面子思い出してごらんなさい。弥生ちゃんに鍵君に水渦(みうず)ちゃんに清水君に……ああ!やだやだ!考えただけでヒヤヒヤする!」 ウチの面子かぁ、 ____オィ!神ぃ!飲みが足んねえぞ!鬼殺しだ!あひゃひゃひゃひゃ! ____オーマイガーッ!グレーート!you!リアルゴッド!アウイェッ! ____神?私に必要以上の試練を与えた張本人ですか……シネ!シネ! ____俺と勝負しろやぁッ!本物の神と闘ってみたかったんだーッ! …………確かに。 想像しただけで胃がキリキリしてきたよ。 「神様呼ぶより清水君のコピーの方がよっぽどマシだ」 溜息をついた先代の遠い目線の延長線、僕は庭の中心部に視線を戻した。 と、そこにはせっかく締めたネクタイを片手で外し放り投げる社長がいた。 どうしたの……? これから藤田家と結婚のご挨拶だというのにネクタイ取っちゃダメでしょう、と訝しく思っていた僕だったが、次の瞬間目を疑った。 ふん!と鼻息荒く力を入れて胸を反らした社長、その巨大な胸板が天を仰いだその時、 ピシッピシッピシッピシッピシッピシッピシッ! 何かが弾ける連続音。 なんだ!?と口に出すより前にその音の正体が知れた。 見れば社長の着ているYシャツの、上から下までボタンが弾け、前が大きくはだけきっていた。 えっ!? えぇぇぇぇぇ!? ちょっ、なにやってんのぉぉぉぉぉぉ!? これから結婚のご挨拶でしょぉぉぉぉぉ!? もうボロッボロじゃないですかぁぁぁぁ!! とてもじゃないけど、親御さんに会って話をする格好じゃないよぉぉぉぉ!
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