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我慢の限界だったのだろう。
いつの間に庭に出たユリちゃんは、すでにお婆さんと貴子さんに甘えて嬉しそうにしていた(僕に絡むお爺さんは後回しにしたみたい)。
その3人が緊張気味の僕にニコニコと手を振ってくれるものだから、なんだかほわっと和んでしまう。
僕も小さく手を振り返しながら、
「本日はとても大事なお話がありまして、皆さんにはここ、清水社長のご実家にお集まりいただきました。こちらにいらっしゃるのは社長のお父様、清水大和さんです。今回お話にご同席いただくのですが、大和さんは霊力のない一般の方です。その為皆さんと直接お話しする事はできません。ですがご安心ください、岡村が通訳をさせていただきます。不慣れで至らない点もあるかと思いますが、頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。それから社長は間もなく戻りますので、しばしお待ちください」
と頭を下げた。
『大事な話……だと?』
僕はただの通訳だから、ここであえてユリちゃん達の結婚の話はしなかった。
着替え中の社長が戻り次第、本人達から話すだろうから。
だけどさすがは山の男……野性的勘がフルに発動したようで、かしこまった僕の挨拶に、お爺さんは激しく挙動不審になっていた。
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