第十三章 霊媒師 清水誠

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◆ 動揺しまくるお爺さんを宥めつつ、藤田家の皆さんには庭から和室にあがっていただいた。 改めて両家顔合わせ、結婚のご挨拶の始まりだ。 「どうぞ、」 大きな座卓に人数分のお茶を置いていく。 清水家は奥から大和さんと社長の2人。 座卓を挟んで反対側の藤田家は、奥からお爺さんとお婆さん、そして貴子さんとユリちゃんだ。 お茶の用意はおまかせください、名乗りをあげた僕に大和さんは「エイミー君はそんな事しなくていい」と慌てて急須を取り上げようとした。 だけど大和さん以外の全員、僕の淹れるお茶はウマイ! の絶賛を聞いて引いてくれたのだ。 人様のおうちで出過ぎた真似だったかな……とも思ったが、今日は両家の顔合わせだ。 スムーズにいくよう、僕にできるサポートはなんでもしたい。 全員分のお茶とお菓子が出揃ったところで、僕は大和さんの隣へと移動した。 そして簡単に藤田家の並び順を説明すると、何度も小さく頷いてどこに誰がいるのか覚えようとしてくれる。 そんな大和さんに僕はめちゃくちゃ感動していた。 そもそも大和さんに霊は視えない。 いくらここにユリちゃんのご家族がいらしてますと言った所で、声すら聞こえないのだ。 手の付けられることの無い3つのお茶。 冷たいままの座布団に人の姿はなく、やたら端っこに座るユリちゃんが時折嬉しそうに何かを話しているが、もはや独り言を呟いているにしか見えないはずだ。 それでも大和さんは訝しがる事もなく、自分の息子を、息子の恋人を、息子の部下を純粋なまでに信じてくれるのだ。 僕は両親に転職した事は話したけど、霊媒師になったとは話していない。 手に職系の専門職だと説明してある。 どんな仕事なの? と聞かれたけれど、大和さん同様、霊感のない両親にどう説明したらいいか迷ったのと心配を掛けたくない一心で、今度帰ったら話すからとはぐらかしてしまった。 いつまでも黙っている訳にはいかないけれど、両親は大和さんみたいに息子の僕を信じてくれるだろうか……? 厳しい所もあるけれど、優しい両親だと思っている。 ただ保守的で少々頭の固い面を持つ彼らは、うまく説明しないと頭ごなしに霊媒師なんて胡散臭い! そんな仕事は反対です! と拗らせてしまうかもしれない。 ああ、ウチも大和さんくらい柔軟だと話は早いんだけどなぁ……
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