2366人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
「爺ちゃん! 岡村さんに身体返して!」
顔を真っ赤にしてプリプリ怒ってくれるのはユリちゃんだ。
強力な援護射撃として、
『お父さん! いい加減にして! 岡村さんは私を助けてくれた恩人なのよ!』
『お爺さん……情けない! 人様のものを勝手に盗るなんて、そんな人じゃなかったのに! うぅぅっ!』
と貴子さんとお婆さんも参戦中。
もっと言ってやってください!
それで早く返してください!
今なら僕、怒りませんから!(怒ったところで負けるけど)
一方社長は、
「エイミーのみてくれで、中身が真さんか! やっべー! マジおもしれえ! おもしれえからしばらくそのままでいいんじゃねぇか?」
と煽る煽る。
社長、とりあえず黙ってください。
先代は溜息をつきながら、
「真君、あとでちゃんと返してよ? それと岡村君の身体で無茶しちゃダメだからね。真君や清水君とは別の意味で身体の造りが違うんだから。いつもの調子で暴れたら、この子ケガしちゃうからね、注意してよ」
諭すように話してる。
もはやすぐに返してくれないのが前提になってるよ。
僕の身体にケガをさせないよう取扱い注意で終話した。
大和さんに至っては、よくわからないと眉を八の字にさせつつも、
「もしかして……エイミー君の身体に藤田さんのお爺さんが入ったの? 見た目と中身がアンマッチ? ほーん、霊能者ってこんな事もできるのか……藤田さん、直接話せますね!」
すでにこの状況に適応していた。
ちょっと柔軟すぎやしませんかー!?
もっとこう驚いたり、気味悪がったりしないんですかー!?
ま、34年間も息子の奇行を見てきた人だから、ちょっとやそっとの事じゃ動じないんだろう。
みんなから色んな事を言われまくったお爺さんは、それでも微塵も怯む事もなく、
『グダグダとうるせーなー、みんな少しは落ち着け、な? ホラ、茶ぁでも飲んでよ』
小指で耳をほじくった後、目の前のお茶を一気飲みして、ノーダメージをアッピール。
『ぷっはー! うめー!』って、いや、ちょ、ナニ言ってんの?
お爺さんがみんなを(主に僕)落ち着かなくさせてるんでしょうよ!
『心配するな。岡村の身体はあとでちゃんと返すからよ。俺はな、まどろっこしい通訳なんか挟まねぇで、大和と直接話がしたかったんだ。それと岡村の身体を傷付けるような事もしねぇよ。こんな細い身体じゃあ、怖くて喧嘩もできやしねぇ』
悪かったですねぇ、細い身体で。
食べても太らない体質なんですぅ、そもそも僕は超平和主義なんですぅ。
だけどまぁ……孫命、娘も命、妻溺愛のお爺さんが家族の前で『後で返す』と言ったんだ。
それを覆すような事は、このお爺さんに限って絶対にないだろう。
僕は少しだけホッとした。
仕方ない、少しだけ貸してあげます。
そのかわり人前でお尻を掻かないでくださいねっ。
最初のコメントを投稿しよう!