第十三章 霊媒師 清水誠

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◆ 「爺ちゃん! 岡村さんに身体返して!」 顔を真っ赤にしてプリプリ怒ってくれるのはユリちゃんだ。 強力な援護射撃として、 『お父さん! いい加減にして! 岡村さんは私を助けてくれた恩人なのよ!』 『お爺さん……情けない! 人様のものを勝手に盗るなんて、そんな人じゃなかったのに! うぅぅっ!』 と貴子さんとお婆さんも参戦中。 もっと言ってやってください! それで早く返してください! 今なら僕、怒りませんから!(怒ったところで負けるけど) 一方社長は、 「エイミーのみてくれで、中身が真さんか! やっべー! マジおもしれえ! おもしれえからしばらくそのままでいいんじゃねぇか?」 と煽る煽る。 社長、とりあえず黙ってください。 先代は溜息をつきながら、 「真君、あとでちゃんと返してよ? それと岡村君の身体で無茶しちゃダメだからね。真君や清水君とは別の意味で身体の造りが違うんだから。いつもの調子で暴れたら、この子ケガしちゃうからね、注意してよ」 諭すように話してる。 もはやすぐに返してくれないのが前提になってるよ。 僕の身体にケガをさせないよう取扱い注意で終話した。 大和さんに至っては、よくわからないと眉を八の字にさせつつも、 「もしかして……エイミー君の身体に藤田さんのお爺さんが入ったの? 見た目と中身がアンマッチ? ほーん、霊能者ってこんな事もできるのか……藤田さん、直接話せますね!」 すでにこの状況に適応していた。 ちょっと柔軟すぎやしませんかー!? もっとこう驚いたり、気味悪がったりしないんですかー!? ま、34年間も息子の奇行を見てきた人だから、ちょっとやそっとの事じゃ動じないんだろう。  みんなから色んな事を言われまくったお爺さんは、それでも微塵も怯む事もなく、 『グダグダとうるせーなー、みんな少しは落ち着け、な? ホラ、茶ぁでも飲んでよ』 小指で耳をほじくった後、目の前のお茶を一気飲みして、ノーダメージをアッピール。 『ぷっはー! うめー!』って、いや、ちょ、ナニ言ってんの? お爺さんがみんなを(主に僕)落ち着かなくさせてるんでしょうよ! 『心配するな。岡村の身体はあとでちゃんと返すからよ。俺はな、まどろっこしい通訳なんか挟まねぇで、大和と直接話がしたかったんだ。それと岡村の身体を傷付けるような事もしねぇよ。こんな細い身体じゃあ、怖くて喧嘩もできやしねぇ』 悪かったですねぇ、細い身体で。 食べても太らない体質なんですぅ、そもそも僕は超平和主義なんですぅ。 だけどまぁ……孫命、娘も命、妻溺愛のお爺さんが家族の前で『後で返す』と言ったんだ。 それを覆すような事は、このお爺さんに限って絶対にないだろう。 僕は少しだけホッとした。 仕方ない、少しだけ貸してあげます。 そのかわり人前でお尻を掻かないでくださいねっ。
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