第六章 霊媒師OJT-2

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大丈夫……落ち着け……こういう時に焦るとロクな事にならない。 それと……あくまで感覚としてだけど、さっき叫んだ時の声の響き方。 あれは2DKの室内での響き方ではない。 じゃあ、具体的にどこなんだと言われれば返答に困るけど、もっと広くて何もない空間、そんな気がしてならない。 目が覚めた時に比べたら眩暈も頭痛も寒気も和らいで、まだ本調子ではないけれど随分とマシになったと思う。 ダメ元でもう1度スマホの電源ボタンを押す。 が、やはり起動しない。 僕は役に立たないスマホを放り投げるも落下音は聞こえなかった。 チッと短く舌打ちをした。 「なにも光源はスマホだけじゃないんだ」 僕はあえて声に出して呟いた。 社長も先代もいないこの空間、残念ながら僕は1人じゃないらしい。 一段と濃くなった血の臭いと共に、この世のものではないであろうドロリとした気配が近づいてくるのを肌に感じた。 だけど僕は恐ろしさよりも、この訳の解らない状況にいい加減うんざりしていた。 社長を真似てコキコキと首をならす。 研修で習った事を思い出すんだ。 僕は大きく息を吐き、両目を硬く閉じると、頭のてっぺん____脳内に神経を集中させた。 湾曲させた左右の手を額の前に構えエネルギーを溜めていく。 数秒か、数十秒か。 瞼の裏に赤い光が透けて見え、その光はどんどん力を増していく。 両手がブルブルと震えだしエネルギーを支えきれなくなる寸前まで粘った。 そして迎えた限界にバチバチとスパークする赤い球体を思いっきり前方に投げ出した。 その刹那、空間に赤い光が四散した。 取り戻した視界に最初に飛び込んできたのは、赤黒い光る衣を身に纏う顔の潰れた女性____田所貴子さんだった。 彼女は僕の発する電気に繋がれたまま、潰れた目の隙間から膨大な憎悪を撒き散らている。 両手を開き、その背後にある大事なものを守るように、骨と皮だけの痩せた身体を盾にしていた。
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