第十三章 霊媒師 清水誠

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「爺ちゃぁぁん、うわぁぁん」 ユリちゃんが再びわんわんと泣き出した。 その声に、大和さんはこっちが引くほど狼狽えて、「ユリさんが泣き止まない! ちょっとキッチンからお菓子持ってくるっ!」と部屋を出ていってしまった。 あわてん坊だなぁ。 泣いてはいるけどユリちゃんの表情(かお)は幸せそうに笑ってるのに。 きっと大和さんの中で、女の子が泣いている!=(イコール)大変だ! になっちゃったんだろう。 てか、お菓子……さすが親子、社長も前に同じ事言ってたっけ。  貴子さんとお婆さんが『良かったねぇ』と、手を取り合って泣いてる隣で先代は、「めでたい! めでたい!」と、量産した電気ツチノコを(本人曰くプードルらしいが)部屋にも庭にもまんべんなくバラ撒いていた。 バラ撒かれたツチノコ達は、陽気にファニーに踊っている、これは……お祝いの表現なのだろうか? そして僕のマイスィートハニーこと大福は、踊る電気ツチノコを片っ端から捕まえては食べ散らかしていた。 だ、大福さん……?  もしかして、おなかすいちゃったんですかね……? で、 「爺ちゃぁぁん! ありがとぉぉ、うわぁぁん」 泣きじゃくるユリちゃんに寄り添う孫命のお爺さんはというと……って、えぇっ!! ちょっ!! これはーーーーっ!! 「ユリ! 幸せになれ!」 「うん! うん!」 「ユリ、誠が好きか?」 「うん! 社長はね、爺ちゃんに似てるんだ。だから好きになったんだよ」 「そうか……そうだったのかぁ! ユリィィィィィ!」 「爺ちゃぁぁぁん!」 感極まったお爺さんは、大事な大事な孫娘の頭をしっかり胸に抱きしめていた。 ____僕の身体で。 あちゃー いやね、分かるよ? 理屈は分かるんだ。 おかしな事はなにもない。 本当の姿は70才の、しかも血の繋がったお爺さんだもん。 ただねぇ、入れ物がねぇ、30才の僕の身体ってのがマズイのよ。 その証拠に、 「オィ、コラァァァッ!! 今ッ! すぐッ! 離れやがれぇぇぇ! 俺だってそんな事してねぇのによ!! エイミーーーーッ!!」 社長が吼えた。
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