第十三章 霊媒師 清水誠

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ノンアルコールの割に宴会はけっこうな盛り上がりを見せた。 ユリちゃんが今、ウチの会社で働いている事や、今日のスーツは入社式の時に着ていたものだと言うと、藤田家全員「ユリがお勤めに出てるなんて!」と、泣いたり笑ったりと大忙し。 スマホに入った入社式の写真を見せてあげたら、そりゃあもう嬉しそうに目を細め、いつまでも長いこと眺めていた。 1人だけ霊感の無い大和さんは、この状況にポツンとしてしまうのではないかと心配したけど、これは僕のラブリーエンジェルこと大福が華麗に解決してくれた。 それは以前、幽霊の視えないキーマンさんと先代を引き合わせた時と同じ方法だった。 本気を出したぽっちゃり猫又は、チラリと僕を視上げて素通りすると、そのまま座卓の下に潜り込み、 『大和に足りないスキルなぞ、私の妖力で余るほど補ってやる____時は満ちた。いざ! 私の姿を視よ!』 と、ごくごく小さな声を発した。 あーん、もー、大福めぇ。 人語を話すトコを僕に視られたくないから座卓の下に隠れたんだな? 気にしなくていいのに。 座卓の下から再び姿を現した大福は大和さんの目にも映る。 大福が何をしたいのかを察した社長が「親父、猫の尻尾にさわれ」と声を掛けてくれた。 そのおかげで二股尻尾の片方を大和さん、もう片方を先代、貴子さん、お婆さんとシャッフルしつつふれてもらい、大福の妖力で直接顔を合わせてもらう事ができたのだ。 ちなみに初めて幽霊を視た大和さんは、怖がるどころかまたもや秒で適応していたし、尻尾の先が割れた猫又をカワイイカワイイと褒めまくってくれた……さすがは柔軟黒帯有段者、動じる事を知らない。 前回、キーマンさんと先代を引き合わせた時は、短い時間で妖力の消耗を訴えて、すぐに眠ってしまったけれど、今日の大福は一向に疲れた様子を見せない。 それどころか、めちゃくちゃ元気なのである。 不思議に思っていると、どうやらさっき先代が量産した電気ツチノコを爆食したおかげで、妖力が有り余っているというのだ。 大福……知らなかったよ、キミは充電に対応してたんだね。 またひとつ、新しい魅力を発見しちゃった! キャー! 大福ー! ステキー! カワイイー! 天才ー! 大好きー! 今度は僕の電気をあげるからねっ!  
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