第十三章 霊媒師 清水誠

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「壱号! 弐号! 参号!」 社長の招集に思業式神の皆さんが庭に姿を現した。 「藤田家のみんなを黄泉の国まで送ってやってくれ。俺の家族だからよ、くれぐれも安全に頼む」 相変わらず声は出さないものの、ガコガコと頭を縦に振って了解の意を表す3人。 藤田家のみなさんは思業式神達の傍に立ち、別れの言葉を口にした。 『誠、ユリ、幸せになれよ』 『誠さん、孫を……ユリちゃんをよろしくお願いします』 『清水さん、ユリ、お互いを大事に仲良くね』 「私と大福ちゃんも、御一緒させていただきますよ」 「うなぁん」 えっ!!! ちょっ!!! 先代!? 大福!? なにそっち側にいるの!? 「なんだぁ? とうとうジジィも成仏する気になったのかぁ?」 ニヤニヤ顔の社長が軽口を叩く、が、とてもじゃないが笑えない、どういう事なの? 「先代も大福もなんでそっちにいるの……? そういう冗談は嫌いです、早くこっちに戻ってきてください、僕を驚かそうとしたってダメですよ……?」 僕の問いかけに先代も大福も困った顔のままで、こちら側に戻ろうはしてくれない。 なんで? どうして? 僕になんの相談もなく、なんの前触れもなく、本当に黄泉の国(むこう)に逝く気なの……? ……駄目だッ!! 絶対に逝かせない……!! 一気に歪む視界、僕はその時、自分が泣いている事に気付かなかった。 もつれる足を無理矢前に出し、広げた両手で力一杯1人と1匹を抱え込む。 離すもんか!! 逝かすもんか!! どうしてもと言うなら力づくでも止める!! 「岡村君……」 「うなぁん……」 先代と大福は困惑の色が滲んでいる……僕、困らせているんだ。 だけど構うもんか、せめて、せめて、 「せめて理由を聞かせてくれるまで、僕、離しませんから!」 数瞬の沈黙が僕の心を谷底へと突き落とす。 お願い、なにか言って。
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