第十三章 霊媒師 清水誠

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「落ち着いて、岡村君。黄泉の国(むこう)に行く理由はね、私が直接、瀬山さんにお礼を言いたいからだよ。真君に瀬山さんを訪ねるように言ったのは私だからねぇ。だけど用が済んだらちゃんと帰ってくるよ」 え……? 帰ってくる……? 本当……? じゃ、じゃあ大福は? なんで大福まで一緒に逝くの? 「大福ちゃんはねぇ、黄泉の国(むこう)にある虹の橋の役人に会いに行くんだって。大福ちゃんには事情があるの。色々手続きしないと、この世にいられなくなっちゃうんだ」 「事情……? なんの手続き……?」 「大福ちゃんは元々、黄泉の国にある動物達の楽園、虹の橋地区にいた子なの。その大福ちゃんがこの世に来たのは、ある理由から、この世の誰か1人でも幸せにする為だったんだ。本来、それを達成したら黄泉の国に戻る予定だったんだけど、ほら、こっちで出会ったのが猫好きの岡村君でしょう? 出会って早々に達成しちゃったのよねぇ……岡村君が『大好き!』『カワイイ!』『幸せ!』って言うたびに、もう充分でしょ、戻って来いって催促がきてたんだよ」 「そ、そうだったの? 僕、毎日言ってたよね、」 「うなぁん、」 「だからね、引き続きこの世にいられるよう、霊界と関わりのあるウチの会社の護り神として登録申請する事にしたの、猫又として覚醒したのも良いタイミングだったし。許可証さえもらえば行き来は自由、ウチの会社だって大福ちゃんの妖力があれば助かるしねぇ。だから安心しなさい。私達は必ず戻ってきますよ」 そ、そうだったんだ…… よ、良かったぁ……! 「なんか、ごめんなさい。僕の早とちりで大騒ぎして迷惑かけちゃって……」 「いや、いいんだよ。泣きながら引き止めてくれて、私も大福ちゃんも嬉しかったよ」 「うなぁぁぁん」 ぴょんと僕の胸に飛び込んで、ぺろりと顔を舐めてくれた大福をギュッと抱き締めた。 僕の大事な幽霊猫、必ず戻って来てね。 「おーい、もういいかー?」 間延びした社長の声に顔を上げれば、帰り支度OKな藤田家のみなさんからガッツリ注目されていた。 うわぁ!  めっちゃ恥ずかしい! てか、社長は分かってたんだ! 紛らわしい事言うから勘違いしちゃったよ! 本当にみなさん、ゴメンナサイ! お騒がせしましたーッ!
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