第十四章 霊媒師 ジャッキー

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◆ 「(わり)いな、研修中だってのによ。実はなY県の現場に行ってたジャッキーが戻って来てよ。エイミーはまだ会った事ないから紹介しようと思ってな」 ブハッ! 隣で吹き出す水渦(みうず)さんに戸惑いつつも、続く社長の話に耳を傾けた。 「ジャッキーな、今さっき到着したんだよ。着払いで、」 着払い? え? 着払いって、さっき来てたミケネコ運輸さんの荷物に関係するの? んー はい? まだお会いした事のない先輩霊媒師のお名前がジャッキーさんである事に、もはやツッコミを入れる気は起らない。 多分また、本名とは別に社長がヘンなあだ名をつけたのだろう。 だけど、Y県の現場を終えたジャッキーさんが着払いで到着した(・・・・・・・・)ってのはツッコまざるを得ないのではないか? 「えっとー、社長? 着払いって? 意味が分からないんですが。もしかして何かのついででミケネコ運輸さんのトラックの助手席に乗せてきてもらった的な感じですか? 着払いってのは、要はそのお礼の代金でしょうか? てかジャッキーさんはどちらにいらっしゃるんですか?」 ブハッ! ひひひ……ひひひひひひひひひひひ……! 再び水渦(みうず)さんが吹き出した。 なに? 僕なんか変なコト言った? 「初めて会うんじゃ分からねぇよな。今ジャッキー出すから待ってろ」 出す? って、言い方おかしくない? 社長は小さなダンボール箱のガムテープをはがし、クッション代わりであろう丸めた新聞紙を取り除く。 するとそこに現れたのは、 「ヒィッ!! なんですかそれ!!」 取り出されたのは、目測40センチほどの汚れた人形……いや、フィギュアだった。 全体的に古びた印象で、身に着けているのは……カンフースーツだろうか? 所々擦り切れて乾いた泥が付着している。 男性型フィギュア特有のがっしりとした身体つきで、ラフな七三分けの黒髪に、人懐こい笑顔……あッ!! あれはッ! あの笑顔は!  誰もが知っている、有名すぎるアジアン俳優じゃないか! 洗練されたカンフーアクションに笑いも取り入れ、決してスタントマンを使わずに、いかなる危険なシーンも自らが挑む、大スターでありながら永遠のチャレンジャー、世界が愛してやまないジャッキー・〇ェン!!(の、フィギュア) もちろん僕も大好きさ!! ジャッキー演じるヒーローは、ただ単に強いだけじゃない! 敵に殴られれば普通に痛がり、ピンチの時には焦った顔で慌てまくる、実に人間らしいヒーローなんだ! めちゃくちゃ汚れているけど間違いない、あれは僕らのジャッキー・〇ェン!!(の、フィギュア)
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