第六章 霊媒師OJT-2

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◆ 強く擦りすぎたのか目元がヒリヒリと痛む。 「あの……」 僕はズズッと鼻を啜りながら、おずおずと田所さんに声をかけた、が、後が続かない。 さっきは“この人には助けが必要だ”なんて思ったけど、どうしたらいいのか。 こんな姿になってまで娘さんを守る為に縛られている田所さんを、ただアパートから祓うのではなく、出来れば納得して成仏してもらいたいと願ってしまう。 ああ、でも、霊媒師見習い、研修5日目。 やっと放電ができるようになっただけの役立たずの僕に一体なにができるのだろう? 役立たずの僕____ ネガティブなワードはネガティブな思い出を瞬時に呼び起こすもので、こんな時に思い出したのは前の会社で営業部からお客様相談センターに異動になった事が分かった時の、元カノの言葉だった。 ____お客様相談センターに移動になったって本当? そこじゃ営業部と違ってインセンティブつかないからお給料さがるんでしょう? はぁ……私、英海と結婚したかったのにがっかりだわ。大体さぁ、営業成績良かったのになんで相談センターなの? 英海、なんか失敗しちゃったの? 地味な課だよねぇ。クレーム客の話をただ聞いてるだけの仕事じゃない____ “クレーム客の話をただ聞いているだけ”か。 確かに元カノから見たらそうなのかもしれない。 営業部のような華やかさも目に見える生産性も無いし、電話の向こうで怒鳴り散らすお客様には、どれだけ案件をこなしても慣れる事無く、いつだって手が震えていた。 それでも僕の中では営業部も相談部もさして変わりはないと思っていて、どちらもお客様のお話をどれだけ沢山お聞かせいただく事ができるか、それによってどれだけ心を開いていただけるか、商品をご購入頂くのもお怒りを鎮めて頂くのも、まずはそこをクリアしなければ話は始まらないのだ。
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